【無料で読める小説とトリックアート】「井の中の蛙達」-10話「学校の保健室は身体も心も養護してくれる」

※この記事の全容はおよそ19分で読めます

最寄の本棚へようこそ♪

 毎週1話ずつ実生活に役立つ知識を盛り込んだ小説を連載しています。僕にとってはこれが処女作なので、かなり未熟さが窺(うかが)えるのではないかと思います。しかしながら、少しずつでも成長して参ります所存です。皆様にはお気が向かれたときに読んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。m(_ _)m 

 

一話はこちら

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 ※今週の記事も数時間遅れての投稿になってしまいましたが、これから少しずつでも予定時刻に皆さんの元に届きますように今後とも精進(しょうじん)してまいります。

 

目次

 

 10話のあらすじ

 久しぶりにあの存在が出てきて水野先生の過去を話し始める。さて、彼女の苦い思い出とは一体何なのか...

 

井の中の蛙達」10話「学校の保健室は身体も心も養護してくれる」

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(トリックアート/撮影:最寄 然太 | 作品について:「夕日に照らされた橋の上を歩く神野(登場人物)」を紙から飛び出させてなんちゃってトリックアートにしました。

(※物語がまだ、前回(9話)の画像にもこの画像にも追いついていません。(;・∀・)。いずれ登場する場面に関連する画像ではあるので、ご容赦願います。m(_ _)m)

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(編集で色温度を上げると全体的にオレンジがかり、背景の机(実物)と絵とが馴染んでより飛び出して見えるのではないかと...)

 

・1・

ー ー ー

 読者諸君(どくしゃしょくん)、お久しぶりである。私のことを覚えておいでの方は是非とも画面の前で右手を挙げてもらいたい。

 さて、ここからは保健室の水野先生の代役として、彼女の過去を私が語らせていただくわけであるが、どうか温厚な目で読み進めてもらいたい。以前にも申し上げた通り、『お前は誰なんだ』などというあなたの声には後程答えさせていただく所存であるし、『お前はもう出てくるな』という非難に対しては端(はな)から受け付けない。しかしながら『早く物語の先を見せてくれ』とあなたがおっしゃるのであれば私は喜んでそれに応じよう。

 

 白いカーテンが靡(なび)くなか、風に乗って流れてくる蝉(せみ)の声に頬杖(ほおずえ)をつきながら1人、水野先生は耳を傾けていた。

 やがて昼休みが終わり彼女が丸椅子をクルリと反転させて立ち上がったちょうどそのとき、保健室のドアが開かれる音が聞こえすかさずそちらに目を移すと、そこには弱々しく1人の女子生徒が右肩を項垂(うなだ)れさせて立っていた。

 尋常(じんじょう)ではない悲痛な少女の形相に、水野先生の世界からは一瞬音が消えた。

「そこに座って。」

 内心では大きな波がうねりを打っていたが、まずは生徒を安心させるために努めてゆっくりと近くのソファーに手で促した。

「どうしたの?」

「階段から落ちたら腕がすごく痛くて。」

 彼女の腕は明らかにおかしな方向に曲がっていて、見るに堪(た)えない有様ありさま)だった。真っ先に119番に救急車を要請してから、迅速(じんそく)に必要な応急処置を施(ほどこ)す。彼女の目からは終始涙が止まることはなかった。

 

 翌日、放課後の職員室でパーソナルコンピューターとにらめっこしていると、横から声をかけられた。声の主は例の女子生徒が在籍する1年7組の担任、遠藤であり彼はジャージ姿で誰から見ても分かるであろうが体育教師だ。背丈が190はあろうと言うほどに高く、体つきは力強さと引き締りを両立させた理想的な体型であるにも関わらず、もう今年で50になると言うのだから驚きだ。その遠藤は水野先生が振り向くのを待ってから「少しよろしいでしょうか。」と、室内の共用スペースを手で差した。

 小さなテーブルがいくつか並んだ周りにまばらに置かれた椅子にそれぞれが腰を下ろす。

 「実はですね。」重々しい口調で遠藤先生が切り出した。「渡(わたり)を診察した医師から昨晩報告がありましてね、その先生が言うには渡の身体には骨折とは無関係な痣(あざ)や擦(す)り傷がいくつもあったそうで、彼が見たのは腕だけですからわからないそうですが、もしかすると服に隠れた傷がまだあるかもしれないとのことでした。彼女は夏場でも長袖のワイシャツを来ていますし、スカートも他の奴らとは違って規則(きそく)通りの丈を守っていますからね。悔しいですが、私は気づけませんでした。」

「なるほど。実を言うとそれには私も少しだけ気がついていて、昨日から気がかりではあったんです。」

「そうですか、水野先生から見てもやはり...。」遠藤先生は考え込むように俯(うつむ)き、顔の堀が深く普段から怖い印象のある彼の顔は、皺(しわ)が増えたことで更に怖さを増した。「そうなると、どうなんでしょう、やはり虐待(ぎゃくたい)かイジメの可能性が高いのでしょうかね。」

「その、渡さんは何か運動系の部活かあるいは習い事には入っていないのですか?例えば、格闘技(かくとうぎ)の類(たぐい)ですと怪我も多いのではないかと。」

「私の知っている限りではそのようなことは何も。」

「そうですか。」そして続ける。「遠藤先生はどうお考えですか?」

「ん~そうですねえ、何とも言い難いのですが、以前に親御(おやご)さんとお会いしたときは、まさか暴力を振るうような人達には見えませんでした。ただ、深夜帯のお仕事のようで子供と会う時間は少ないようでしたね。」

「なるほど。しかし、人は見かけによらないとよく言いますから、まさか、なんてこともあるのかと。」

「ええ、そうですよね。」

「クラスの方はいかがですか?」

「ん~、渡は大人しい子で大抵(たいてい)いつも1人でいることが多いのですが、いじめられているような様子は伺えません。ただ、まあどこのクラスでも同じでしょうが、一部の騒(さわ)がしい奴らが悪戯(いたずら)をしているところはたまに見かけます。とは言っても、それは渡に限ったことではありませんし、そういうときは私も叱(しか)るのですがねえ。」

 お互いに考え込み会話に少しの途切れが生じたが、間もなく遠藤先生が質問をした。

「水野先生はあいつとはあまり関わりはないでしょうが、どう考えますかね?」

「まだ曖昧(あいまい)なのですが、私はイジメの線を疑っています。というのも、骨折は学校で起きた事でしたし、あのときの彼女はまるで何かに怯えているようでした。もちろん、これは私の勘違いかもしれないのですが。」

 水野先生の台詞が終わったところで、「失礼します!」と威勢(いせい)良く誰かが言い、その声は続けて「遠藤先生を呼びに来ました!」と言った。出入り口付近に立っているその生徒は身長が高くジャージを着ていた。恐らく遠藤先生が顧問(こもん)を務(つと)めるバレーボール部のキャプテンだろう。彼らはほぼ毎日熱心に練習に励んでいる。

 遠藤先生はそれに「今行く。」と答えてから、振り返って申し訳なさそうに顔を顰(しか)めその通りに「申し訳ない。」と言って更に続けた。「また後日お時間があるときにお話し聞かせてください。」

「はい。わかりました。とりあえず、私の方でも彼女のこと注意して見ておきますね。」

「ああ、ありがとうございます。しっかりしている子なんですが、何を抱えているのかわからないところがあるので、本当によろしくおねがいします。では。」

 遠藤先生が職員室から出ていった後も、水野先生はしばらくその場で考え込んでいた。

 渡かぐや、それがその女子生徒の名前である。

 水野先生は窓際(まどぎわ)の自分の机に戻ったものの作業に手がつかず、そのままぼんやりとカーテンの隙間(すきま)から見えるまだ薄っすらと白いだけの月を見上げていた。

 

 それから、女子生徒は2日間学校を休んだものの3日目には登校したようで、その日の昼休みに彼女は保健室に顔を出した。肩から吊(つ)るされた黒いアームホルダーに右腕を埋(うず)めている。

「先日はご迷惑をおかけしました。」

「迷惑だなんて、そんなことないから大丈夫だよ。」

「ありがとうございます。」

「怪我はどう?」

「お陰様で、少しずつ良くなってきています。」

「それは一安心ね。」それがひとまずの本心だったので水野先生の笑顔は実に自然で、美しいものだった。少なくとも私はそう感じたのだ。

 先生は3日前と同じように近くのソファーを勧(すす)め、生徒はすんなりとそれに腰を下ろした。先生は丸イスを転がしてその正面に座り優しく話しかける。

「渡さんは保健室がどんな場所か知ってるかな?」

 少女は予想外の質問に一瞬驚いたようではあったが、ゆっくりと言葉を紡(つむ)ぎ始めた。

「え、そうですね、怪我の治療をしてもらえる所でしょうか。あ、あとは、具合が悪いときに休めるところですかね。」

「うん、御名答(ごめいとう)。」優しく微笑んでから続ける。「でも実はね、それだけじゃないんだなあ。」

 生徒が答えを待つような目をしたのを確認してから、丸椅子をギシギシと鳴らして少し前のめりになる。「相談をするところ、でもあるんだよ。」

「相談、ですか。」

「そう。健康上の悩みはもちろんだけど、その他にも学校での悩み事とかご家庭での悩みの相談もしていいんだよ。」

「知らなかったです。でも、そういう人、いるんですか?」

「うん。多分、渡さんが想像しているよりはいると思うよ。」

 生徒はそれにうなずきはしたが、視線を少し落として黙り込んでしまった。

「だからね」少し間を置いてから次の言葉を投げかけた。「渡さんも話したいことがあったら来てね。」

 それを聞いて、先生を見上げた生徒の目は涙で濡(ぬ)れていた。

 そのときだった。ドアを控えめにノックする音が聞こえたのである。心を開きかけていた少女の心の扉が閉ざされてしまうのを私は感じた。

 水野先生は彼女に「ごめんね。」と囁(ささや)いたあとに「はあーい、どうぞー。」と優しく声を投げた。すかさず引き戸をスライドさせて顔を覗(のぞ)かせたのは

 

続く...

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(少し違う角度から。)

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(それを編集で色温度を上げて。)

 

ストーリー内の人生に役立つ知識の解説

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(※画像はイメージです。提供元→Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像)

 

 この小説には僕たちが住む現実世界でも役立つ知識が盛り込まれています。(現在は希薄(きうす)ですが徐々に質を高めていく所存です)。ここではそれを更(さら)に掘(ほ)り下げて詳しくわかりやすく解説していきます。

 

学校の保健室は心の悩みも聞いてくれる

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(※画像はイメージです。提供元→OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像)

 

 今回は学生さん向けの知識になりますが、お子様がいらっしゃるお父さんやお母さんなどの保護者層の方にもお役に立つと思います。

 水野先生(登場人物)が言っていたように保健室の先生(養護教諭とも言う)は相談も聞いてくれるという事実をあなたはご存知でしたでしょうか?僕は、保健室に相談に行く人がいるというのはなんとなく知っていた程度で、僕自身は学生のときに相談をしに行くことはありませんでした。

 前提として、保健室は生徒の健康を養護する場所という認識が誰の中にもあることでしょうが、それはなにも怪我の応急処置をしたり具合が悪いときに横になって休むことだけではありません。身体と同様、心にも健康という言葉は当てはまり、それを養育することも保健室の先生の大切な仕事です。例として「保健室登校」という言葉がありますがこれは主に、何らかの理由で学校に来るだけでも困難な生徒がある種のスモールステップ(小さな目標を1つずつ達成して少しずつ大きな目標に近づいていく考え方)として「まずは保健室から。」と用いられる方法です。(ちなみに、辻村深月(つじむら みずき)さんの小説「かがみの孤城」にも保健室登校の場面がありました)

 つまり、学校において保健室とは心身どちらの健康にとってもの養護の場ということになります。

 いきなり担任などの先生や、スクールカウンセラーなどの専門家に相談するのはハードルが高く感じる方はまず、休み時間や放課後などを活用して保健室の先生に話しを聞いてもらうのが良いかもしれません。(僕なんかはそれすらできない生徒でしたが...。(;・∀・))

 とはいえ、保健室の先生も人間ですから先生によっては、または学校によっては真摯に応じてもらえないことも、ひょっとするとあるかもしれません。が、試してみる価値はあるのではないかと僕は思います。

 

保健室についての知識の情報源

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(※画像はイメージです。提供元→Michal JarmolukによるPixabayからの画像〉

 

 インターネットの様々な記事を閲覧し総合的に分析して。(なので信憑性が高いとは言えません。)

 

ちょっと余談。美しき小説「かがみの孤城

 〈先程ちらっと紹介しましたが、仲間がいる喜びを味わえる僕が大好きな小説です。気になる方はよろしければ。↓〉

 

雑談

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(※画像はイメージです。提供元→Susanne Jutzeler, suju-fotoによるPixabayからの画像)

 

 ここでは僕が雑談をただベラベラと話すことで、皆さんと「楽しい感じ」を共有できればいいなと思います。興味のない方は読み飛ばしてくださいね。 (・∀・)

散歩中に出会った1人きりでブランコを揺らす天使

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(※画像はイメージです。提供元→Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像)

 

 今週のある日、僕が自然豊かな公園で日課の散歩をしていると、遠目に木漏(こも)れ日の中でブランコの座席の上に立ち優雅(ゆうが)に空中を漂(ただよ)う少女が見えました。僕はいつもそのブランコの横を通ることにしているので、その日もそのまま直進し通り過ぎようとしたそのときでした。

「こんにちは。」

 声の方に目を向けると僅(わず)か7つ程の小さな女の子がわざわざブランコから降りて真剣な顔でこちらを見つめています。それを見た途端(とたん)僕は、遥(はる)か上空でギンギラと輝く太陽がニタッと笑い、その輝きを更に強め世界中を明るく照らし出したような気がしたものです。

 僕はマスク越しにできる限りの微笑(ほほえ)みを彼女に投げかけこちらも「こんにちは。」と返してからその公園を後にしました。

 (*´∀`*)

おかしな小説でふざけまくる!(笑)

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(※画像はイメージです。提供元→StockSnapによるPixabayからの画像)

 

 ※今回から「おかしな小説」と称した少し気持ちの悪い小説を、雑談の項(こう)の最後に書いていこうと思います。

 ※これを書こうと思ったのは、過去に実際に放送されていた「アルコ&ピースオールナイトニッポン」の中で読み上げられていた「サイコメール」に触発(しょくはつ)されたからです。

 ※「サイコメールって何?」にはこちら↓

hibijuuzitu-syotenn.hatenablog.com

 

 ※「サイコ」という言葉の本来の意味は「精神」や「霊魂れいこん」ですが、映画「サイコ」の影響で「精神異常」などの意味でも使われるようになりました。 

 ※「サイコ小説」ではなく「おかしな小説」と名付けたのは、僕が「精神異常」という意味合いの狂気じみたユーモアとはまた違った、単純に「おかしいなあ。(笑)」という雰囲気(ふんいき)を持つ作品を書きたいと思ったからです。

 

 ある朝目が覚めると、横には友人がいた。

 「気持ちは分かるけど、そろそろいいんじゃないの?」とそいつが言ったから、俺は少し笑って返事をした。「帰りたまえよ。」

 朝食は食べずに散歩をするため靴(くつ)を履(は)いて外に出る。空を見上げると雲がどんよりと垂れ込めていて今にも雨が降りそうだったから俺は玄関のドアを開けて傘を取りに行こうと思ったのは先週の水曜日のことではなかったと思う。 

 いつも通る小道を歩いていると、杖(つえ)を片手に持った紳士が立ち止まっているのが遠目に見えたような気がしたので、念(ねん)の為(ため)一度目をそらしてからもう一度見た。つまり2度見をしたのだけれど、あいにくそれは2度見とはならずにただ違う方向に視線をずらしただけになってしまったのだが、そこにも杖を片手に持った紳士が立ち止まっているのが遠目に見えたので、俺は驚(おどろ)きたくなって実際(じっさい)、驚いた。と友人は語った。

 そんな風にまだ寝ぼけていて冴(さ)えない頭を全力で回転させて、友人の話を聞いていた俺はふと窓の外を見た。もう外は暗くなりかけていて空には黄色い月が浮かんでいる、ということにはなっておらず相変(あいか)わらず明るいままだったので、俺は友人に言った。「明るいね。」

「ありがとう。」

 友人は自分のことを褒(ほ)められたのだと勘違(かんちが)いしたみたいだけれど、それは同時にその友人が勘違いをしていると俺が勘違いしている可能性を浮上させたので、先程(さきほど)よりも少しだけ動きやすくなったように感じるけど実はそうではないかもしれないとは俺の思い込みであって実際にはやはり動きやすくなっている脳みそを使ってそれを検証(けんしょう)してみることにした。まず、目の前の友人が勘違いしていると思っているのは紛(まぎ)れもなく俺でありそう思っているのは俺に限るのでつまるところ証人は俺しかいない。だからその証人である俺が勘違いや思い込みをしているのであればその事実は真実だとは言えなくなってしまうのでそれは逆説である、友人が勘違いしていると俺が勘違いをしているだけかもしれないという考えが真実である可能性も十分にあるということになる。だとすれば俺が「明るいね。」と言ったのに対した、今は目の前ではなく俺の右側に移動した友人の「ありがとう。」という返答は、外が明るいことを言葉にした俺に向けられた感謝なのかもしれない。だから確認のため、本人である友人に聞いてみることにした。

「勘違いしているかい?」

「もう8月だけどどうする?」

 求めている返事が得られなかったことに少しの不満を感じた俺は右側にいる友人の方を向いたのだけれどそこには誰もおらず、目当ての友人は俺の左側、正確には友人がいるであろう右側を見る前の俺にとっての左側、または今すでに右を向いている俺からすれば後ろになる場所に友人はいたので俺はそちらを見ようかという一瞬の迷いに苛まれたが、やはり見ることにしたのはよいものの、友人はなんとまだ眠っていたのだった。つまり今まで俺は寝言と会話をしていたということに気がついたとき、ここが俺の家ではなく友人の家だということに気がついた。昨日は夜遅くまで友人と炭酸水を酌(く)み交わした挙げ句、彼の家に泊まることにしたのだと思い出したのは先週の木曜日の出来事ではなく今日の出来事だ。

 とはいえ、俺も色々と思考を巡(めぐ)らせているうちに眠くなってしまったのでもう一休みしようと横になり、「おやすみ。」と空間に声を投げたところでやはり眠るのは止めて起きることにした。何せ今はもう朝になっており今日は仕事があるからあと1時間後には会社にいなくてはならないと思ったので、俺は友人の家を後にして自分の家に戻って身支度をしようと試みかけたけれど、俺はもうすでにスーツを着ていて昨日友人の家に来たままに鞄(かばん)も手元にあったので、そのまま会社に直進することにした。ただ、直進と言っても文字通りの意味でビルや家などの障害物(しょうがいぶつ)を押し倒すまたは貫通(かんつう)して会社に向かうということではない。寄り道をせずにできる限りの最短ルートで向かうという意味で俺は心の中でつぶやいたのだけれど、それは俺だけが認知していることであって、他者からすれば文字通りの意味に受け取られかねないと危機感に襲(おそ)われたので、その言葉は心の中だけにしまうことにしたと思うのは多分来週の土曜日あたりになると思う。

 

 

最後に

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(※画像はイメージです。提供元→PexelsによるPixabayからの画像)

 

 今週もお互い、頑張りましたね。お疲れさまです。(^O^)/

 また、皆様の今週の出来事あるいはおかしな小説はコメント欄(らん)にてお待ちしておりますのでお気軽にお寄せくださいね。\(^o^)/

 それでは、読んでいただきありがとうございました。よろしければ、また来週♪(^_^)/~

 

続きはこちら(2020.9.8添付)

hibijuuzitu-syotenn.hatenablog.com

【無料で読める小説とトリックアート】「井の中の蛙達」-9話「逃走反応」

※この記事はおよそ21分で読めます

最寄の本棚へようこそ♪

 毎週1話ずつ実生活に役立つ知識を盛り込んだ小説を連載しています。僕にとってはこれが処女作なので、かなり未熟さが窺(うかが)えるのではないかと思います。しかしながら、少しずつでも成長して参ります所存です。皆様にはお気が向かれたときに読んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。m(_ _)m 

 

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 ※今週の記事も数時間遅れての投稿になってしまいましたが、これから少しずつでも予定時刻に皆さんの元に届きますように今後とも精進(しょうじん)してまいります。

 

目次

 

井の中の蛙達」9話のあらすじ

  話し合いの結末はいかに...

井の中の蛙達」9話「逃走反応」

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(トリックアート:筆者)

(※ストーリーがトリックアートに追いついていませんがご容赦ください(汗))

(※トリックアートの観点では、「紙をカッターで切り取りその下の机に小さなハンマーで穴を開けるとその下には小川が流れていた」という感じでございます。そして、もうすでにお分かりかもしれませんが、背景の壁と机以外は平面の絵です。)

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(左下から赤と桃色の中間と言うべき色の光を当ててみました。)


・1・

 「どういうことですか?」

東條はいかにも『何(なん)のことを言っているのだか』という風(ふう)に口をすぼめ、むしろ答えを教えてほしいかのごとく少し身を乗り出した。

 私は彼女の態度の変容ぶりに驚愕(きょうがく)していた。さっきまではタメ口だった委員長に対して、今は敬語を使っている。それはなぜかと理由を考えてみると、第一に先生がいるからというものが候補に浮上した。でも、考えてみれば廊下で東條が「なんで委員長がいるの?」と質問したときにも背中を向けていたとはいえ前には先生がいた。さすがの東條も沢口先生には敬語を使う。ところが、人によっては使わないで馴れ馴れしく接することもある。例えば、英語の最上(もがみ)というまだ20代の小柄な女性教師だ。彼女にはタメ口で話しているのをよく目にする。どうやら、人によって態度を変えることは確かだけど、その判断基準は定かではない。

 「いえ、申し訳ない。少し意地悪なことを言ってしまった。」

先まで鋭(するど)く低かった委員長の声が、普段通りの和やかな声に戻ってしまった。私は、委員長が圧倒的な雄弁(ゆうべん)さで東條を言い負かしてくれることを想像し期待していたので、少しの驚きと共に残念になった。一体どうして攻撃の手を止めてしまったのだろう。

 「わかった。」様子を見ていた先生が、もやもやと漂う微妙(びみょう)な空気を割った。「東條、ぶつかってしまったことは認めるんだな?」

「はい。急いでて気づかなかったと言うか、まさか落ちたなんて思わなくって。すいませんでした。ごめんね、小林さん。」

 返答に困った私は、足元を見て小さくうなずくのが精々(せいぜい)で、それを見て彼女がどんな顔をしたのかはわからない。

 「そうか。よく正直に話してくれたな。」 ズッシリ、というふうに大げさに顔を渋くした先生は続ける。「後山、神野、間違いないか?」

 2人は一瞬お互いに顔を見合わせてから先生の方に向き直りフェードインで「は...あい。」答え、「間違いないです。」と確かな口調で付け足したのは後山だった。

 「すいませんでした!」

 やや大げさに東條が再度謝罪の声を上げたけど、それは私に向けられたものではなく、裁判官の役目を果たす教師に向けられたものだった。

「反省してるんだな。でも謝罪は後にしよう。まだ話すべきことがあるんだ。」

少し間をおいてから、先生は切り出した。

「実はなあ、小林が落ちたときの事を階段の上から柏原君が見ていたらしいんだよ。」

「え」

 先生は委員長の方を見て、委員長はそれに答えるようにうなずく。

「どうやら彼には、東條が小林を押したように見えたんだってさ。」

「そんなの見間違えか嘘ですよ。」

「東條はそう思うだろうけど、彼の話しも聞いてみてくれないか?」

 東條はため息こそしなかったけど、あからさまに嫌そうな顔で下を向いた。

 委員長はパイプ椅子をギシギシ鳴らしながら座り直して、口を開いた。

「先生がおっしゃりました通り、私は階段の上から一部始終を目撃しました。あのとき東條さんと後山さんと神野さんの3人はとても慌(あわ)てた様子で私の側を駆け抜けて階段へ向かっていきました。どなたかはすれ違った私のことを覚えておられるのではないでしょうか?」

 彼は話を一旦止めて3人を順に見つめ、彼女等は無言のまま首を横に振ってそれに答える。

「そうですか。では、残念ながらこの証言は私の主観に過ぎないということになってしまいますな。」

「そうですねえ。」

 勝ち誇ったようなすまし顔の東條が言った。   

 「とはいえ、参考程度にお話しさせていただきますと、私には東條さんの左手が小林さんの背中、正確にはリュックサックを後ろから押したように見えたのです。そしてそのとき、貴方(あなた)はこのようにおっしゃっていました。おい邪魔だよ、と。」

「それはあなたの主観に過ぎないでしょう?」

「もちろんです。しかしながら東條さんの論(ろん)も同様、あなたの主観に過ぎません。」

「私は嘘なんかついていませんけど。」

 淑女(しゅくじょ)の仮面の下から伝わってくる東條のムッとした態度を、委員長は敏感(びんかん)に感じ取ったのだと思う。すかさず両手の平を顔の前にかざして、なだめるような口調になる。

「どうか誤解なさらずに。私はあなたを責めたり悪者に吊るし上げようとしているのではありません。ただ私は、今この状況で双方にとってメリットのある唯一の道は、互いに自分自身の魅力だけでなく弱点にも確(しか)と目を向けそれを受け入れ、自分のことを思いやるのと同様に相手のことも思いやることで導かれるのだと考えているだけなのです。他者を貶(けな)し見下すことは、一時的には快感を齎(もたら)してくれる一方で、長期的に見ればそれ以上の代償を支払う羽目(はめ)になります。そんなことは誰も望まないでしょう。人として生まれた以上、最大の幸福はやはり人に尽きるのではないでしょうか。どんな天才にも必ず、支えてくれた仲間がいるものです。この広い世界の小さな島国日本で、星の数ほどある高等学校の同学年のしかも同学級で出会うことなど限りなく奇跡に近いことなのです。その奇跡的な出会いはときとして一生の宝になり得ま...」

「何が言いたいんですか。」

 委員長の熱弁は、それを退屈そうにしかし努めておしとやかに座る東條によって遮られた。それによって、言葉を重ねるごとに高まっていた熱が引いてしまった。

「これは失礼しました。つまり何が言いたいのかと申しますと、私はあなたを攻撃しようとしているわけではないということです。ご理解願えますか?」

「だから何なんですか?私は押してないって言ってるじゃないですか。」

 東條は頬(ほほ)を赤らませて少し強い口調で言った。でも、淑女の仮面を外したわけではなかった。 

 「よしっ。柏原君ありがとう。東條、もう少しいいか?」

「まだ何かあるんですか?」

 東條は少しの怒りとそして少しの甘えを含んだような声だ。

 「小林の話しも聞いてやってくれないか?」

 実はさっきから、私は密かに先生の態度に対して違和感を覚えている。どうもこちらが蔑(ないがしろ)ろにされている気がするし、逆に東條には肩入れしているような気が少なからずしてならない。

 「小林。」

 気づくと先生がこちらを見ていて、周りに目を向ければ他の誰もが私に顔を向けていた。話さなければいけない。でも、話したところで何かが変わるとも思えないというどうしようもない空虚感に襲われて、思うように言葉が出ない。そもそも私はここで何を話すつもりだったのか、初めから話すことなど何もなかったように思えてくる。『止めてほしい。』と頼んだところで彼女達は止めない。先生の手を借りようにも、私の話を信じてもらえるとは思えないし、例え信じてもらえたとしても、果たしてそれで何かが変わるんだろうか。嫌がらせは大人が見ていないところで行われる。それを大人がどうやって助けてくれるのか、私にはわからない。私は何をどうしたらいいのかが、わからなかった。

 そして、かろうじて呟く。

「私は押されたと思ったのですが、そうではなかったかもしれないです。すみませんでした。」

 そう言いながら、頭の中ではありとあらゆる記憶や感情が複雑に絡み合って、それが高速で回転していた。私はそれに圧倒されるがままに頭がボーッとして、すぐにでもこの場から逃げ去りたい衝動(しょうどう)に駆られた。

 「これは私が余計な事をしたかもしれない。」

 立ち向かうわけにも逃げるわけにもいかず、そしてどうすればよいのか、どうしたいのかすらわからなくなってしまった私を救い出してくれたのは委員長だった。

「目撃者の私がでしゃばった真似をしたようですね。そもそも彼女はあまり積極的ではなかったのです。それを独(ひと)りでに熱くなった私が駆り立ててしまいました。申し訳ない。」

「いやいや、謝ることはないよ。こうやって意見をぶつけ合うことは大切なことだからね。」沢口先生はあからさまにホッとしたように背もたれによしかかりながら続けた。「まあ、お互いの認識にズレがあったんだろうな。」

 「小林。」再び先生がこちらに顔を向ける。「怪我は大丈夫か?」

「はい。もう大丈夫です。」

 かろうじて軽傷で済んだものの正直なところまだ痛みはある。でもここで流れをこじらせるわけにはいかない、そんな空気が私には感じられたし、何より私自身この話し合いが早く終わることを願っていた。

「そうか。東條も反省しているみたいだから、許してやってくれよな。」

「はい。大丈夫です。」

 許す、と言うことは口が許さなかったので、下を向いて小刻みにうなずきながら曖昧な返事をした。

「じゃあ。」先生はこれまでよりも張った声で淀(よど)んだ空気の流れを変えた。「東條、小林に謝るときが来たぞ。」

 心身ともにズタボロな私は、更(さら)にみぞおちのあたりに蹴(け)りを入れられたような気分になり、より強く『早くここから出て外の空気を吸いたい』と願った。ここは私が生きられる環境じゃない、まるで水の中にいるように息が苦しい。

 「小林さん、怪我させちゃってごめんね。気づかなくてごめんね。」

 極めて申し訳無さそうな東條からの謝罪は以上だった。あまりにも簡潔(かんけつ)すぎるのではないかとやや驚愕したけど、つべこべ言っているわけにもいかない。そそくさと、そしてこちらも簡潔に返す。

「こっちもごめんなさい。」

「はあい。じゃあ仲直りということで。」先生は腕(うで)に身につけていた時計を一瞥(いちべつ)してから、椅子をギシギシと鳴らして立ち上がる。「この件はおしまい。お互い仲良くな。」彼は満足げに腰(こし)に手を当て唇(くちびる)に力を入れ、そして小刻みにうなずきながら私達を見回した。

 真っ先に東條が荷物を持ち上げドアを開け放ち、少し遅れて後山と神野が後を追う。部屋満杯に膨張(ぼうちょう)した空気がそれによって一気に外に流れ出したような気がして、緊張(きんちょう)の糸が切れた私の体からはサーッと潮(しお)が引くように力が抜けていった。

 先生は満面の笑みで最後の台詞を吐いた。「じゃあ、先生用があるからもう行くな。明日も元気に来いよ。」私がそれに「はい。」とだけ返すと、足早に先生は部屋を後にした。

 ふと隣にいる委員長を見ると、彼は足元の床を真剣な顔で見つめていた。

「委員長、ありがとうございました。」

「お礼を言われるほどの事はしていないさ。むしろ謝りたいくらいだ。」

 ドアの隙間(すきま)から入ってきた運動部の声や楽器の音が多目的室Bに賑(にぎ)やかさを与えた。夕日に照らし出された埃(ほこり)が目の前を過(よぎ)る。

 

・2・

 「経過は順調。あと2周間もすれば包帯取って大丈夫だからね。」

 垂れた前髪の隙間から保健室の先生が優しく笑う。彼女の名字が「水野」だということを入学してから今までの期間で私は忘れていた。

 その先生に昨日の放課後、「怪我の様子を見たいから明日の放課後も来てもらえるかな?」と聞かれたので、私は今保健室にいる。さっきまであの地獄のような空間にいたせいで物凄く疲弊(ひへい)している私には、ここの安らぎはまさに天国にいるように感じられる。

 実は今日、水野先生の申告のおかげでいつものように制服ではなく体育ジャージで登校しても良いという許可を学校から貰(もら)って、その通りにしている。締(し)め付けが少なく楽な上に、膝(ひざ)や手首の怪我があからさまに見えることもないので、かなりありがたい。ただ、そうするためにはジャージと言えど半袖短パンでは意味がないから、もちろん長袖長ズボンを着ている。この猛暑ではそれがちょっとだけ普段よりも辛い。

 水野先生はめくっていた私のジャージの袖を静かに下ろしながら声を潜(ひそ)めて言う。

「ところでなんだけどね、ここに来るまでにかなり時間があったし、すごく疲れているみたいだけど何かあった?」

それにつられてこっちもコショコショと応じる。

「あ、さっきまで沢口先生に呼び出されて東條さん達と話し合いをしていたんです。委員長が一緒に参加してくれました。」

 多目的室から出た後、委員長に「よければ散歩でもどうだ?」と誘(さそ)われたけど保健室に用があると伝えると「では私も行くよ。」と付いてきてくれた。前回よろしくドアの近くの丸椅子に腰掛(こしか)けている彼は「多目的室B」からずっと何かを考え込んでいるようだ。私の視線に気づくと少々はにかんでうなずいた。

「なるほどね。そうなったか。」

「沢口先生から聞いていなかったんですね?」

「うん。教えてくれなかったな~。」

「私も朝、水野先生が来てくれた後に、放課後職員室来れるか?って沢口先生に言われたんです。」

 実は今朝のホームルームが始まる前のまだ早い時間に、水野先生が教室まで来てくれて「沢口先生にはまだ、小林さんがなんで怪我をしたのかってことしか話していないの。押されたみたいだけどもしかしたら間違ってぶつかったのかもぉ...って感じに濁しておいたから。」と周囲を見渡しながら極めて小声で伝え、最後に「これからどうなるかわからないけど、私も慎重(しんちょう)に動くつもりだから一緒に頑張ろうね。」と言い残して足早に去って行った。その後、委員長の教室にも行ってくれたらしい。

 「そうだったんだね。で、どうだった?」

「まあ予想通りでしたけど、東條、あ、もう東條って呼びますけど、東條は押したことは認めませんでした。」

「そうなるのね。」と言いながら先生は少し笑う。

「彼女達からすればぶつかっちゃっただけの事故みたいで、そのことについては一応謝ってくれましたけど。」

「そうか。沢口先生はどんな感じだった?」

「なんか、変な感じでした。」

「というと?」

「こっちの話しを初めから信じていないみたいでしたね。東條にばかり気を使っていて、逆に東條は先生に甘えているような感じで、正直ちょっと気持ち悪かったです。」

「う~ん。そんな感じだった?」

 先生が委員長に尋(たず)ねる。彼はまだ考えている様子だったけど、またハッと顔を上げてゆっくりとうなずきながら答えた。「私も小林さんと同じことを感じました。」その答えに私は胸(むね)をなでおろした。私だけの勘違(かんちが)いなのではないかと少なからず不安だったからだ。

 それを聞いた先生は納得したように「ん~」と唸(うな)りながら天井を見上げた。

「ところで」唐突(とうとつ)に切り出したのは委員長で彼はこう続けた。「先生、1つ質問があるのですがよろしいでしょうか?」

「うん。柏原君、なんだね?」

 ちょっとおどけて答える先生が年上だけど可愛い。

 「今朝は立て込んでいてお聞きできませんでしたが、先生はなぜ沢口先生には事の全てを話さなかったのですか?」

「ああそれはね、ちょっと過去に苦い思い出があってね。」

「それはお聞きしてもよろしいことでしょうか?」

「そうだね、あなたたちには話しておきましょう。」そして先生は一段と声を落として話し始めた。「これは私が前にいた学校での話なんだけどね...」

 

つづく...

10話は本記事の最下部から(2020.9.1付け足し)

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人生に役立つ知識の解説

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(※画像はイメージです。提供元→Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像)

プラセボ効果とストレス

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(※画像はイメージです。提供元→Ewa UrbanによるPixabayからの画像)


 一般にストレスは悪い印象を持たれがちですが、実は考え方次第では良いものにもなりうると聞けばあなたは胡散臭(うさんくさ)く思うかもしれません。ですがこれは科学的な裏付けのある事実なのです。

 考え方で何かが変わると言えば「プラセボ効果」は有名な話です。プラセボとは偽薬(ぎやく)のこと。病気を患(わずら)っている患者が「薬」と医者に言われて飲んだものが、実際はただの砂糖の塊(かたまり)つまり偽物(にせもの)だったとしても症状が改善することが、場合によっては少なからずあるというのです。これは薬を飲んだと勘違いしたことによって体内の自然治癒力(しぜんちゆりょく)が引き出されたことによるものです。

 しかも、これは患者が偽物だと知っていても効果は変わらないというのですから驚(おどろ)きです。医者に「あなたの体内には様々な自然治癒力が備(そな)わっており、このプラセボはそれらの力を引き出すためのトリガー(引き金)になります。」とプラセボ効果の仕組みを理解した上で服薬した場合も症状に改善が見られたのです。(※もちろんそうならない場合もあります)

 この事実からは、考え方によって体の反応が変わるということがわかります。それは時として分泌(ぶんぴつ)されるホルモンにまでも影響(えいきょう)を及(およ)ぼします。

 ストレスが悪いのはそれに対する僕らの反応が適切でないためです。例えば、やるべきことが山程あるときに適切な反応は逃げるではなく、挑戦です。妻が怒っているときには戦うではなく、思いやりが必要です。

 東條達との話し合いはゆずほにとってかなりのストレスでした。このときのゆずほはご存知の通り「今すぐに逃げ出したい!」という気持ちでした。これはストレスに対する逃走反応です。あのときの彼女の体内では逃げるために必要な準備が為(な)されていたはずです。また、東條の内心はゆずほや委員長への敵意だったでしょうから、彼女の身体は戦う準備をしていたはずです。さて、委員長はと言えばそれはゆずほへの思いやりの反応でしょう。 

 このように考え方次第でストレスは良いものにも悪いものにもなり得ます。「このストレスは自身の成長に使える」や「ストレスのおかげで自分が何を大切にしているのかがわかった」などストレスの良い面を享受(きょうじゅ)できるようになれば日々はガラリと変わります。

 最後にストレスの良い面をもっと知りたい方におすすめの1冊をご紹介させていただきます。この本は控(ひか)えめに表現して僕のバイブルです。( ・ิω・ิ)

ケリー・マクゴニガル「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」 

 (以下は類似リンクです)

 

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おまけという名の雑談

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 (※画像はイメージです。提供元→Susanne Jutzeler, suju-fotoによるPixabayからの画像)

 

 あなたの今週はいかがなものだったでしょうか?(*´ω`*)

委員長を見習って冷凍ブルーベリーを購入

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(撮影:筆者)

 

 委員長は間食にブルーベリーとクルミとヨーグルとを食べていることが前回明らかになりましたが、それに感化され今までフルーツと言えばバナナが主流だった僕も今週はブルーベリーにもお世話になりました。

 フレッシュのブルーベリーの方が栄養価としては良いのかもしれませんが、金銭的(きんせんてき)に僕にそんな余裕はないので冷凍されたものを探しに近所のスーパーに顔を出すとそこには350gが500円程度で販売されていました。

 早速購入し、完食のバナナと入れ替えると、実感としては第一に腸内環境が良くなり便がよく出るようになり、次に集中力も「なんかいい感じ」なので、ブルーベリーを食べているという主観的な要因も加わって総合的に見てやはり「なんかいい感じ」であります。

 メンタリストDaiGoさんの動画でフルーツは1日両手に乗るくらいが良いと学んでいたので、夕食と共に食しているバナナと合わせてその範囲(はんい)に収(おさ)まる程度のブルーベリーを毎日食べてはいますが、何せ金銭力の乏(とぼ)しい僕は月に500円とかそこらの出費すら痛いわけであり、今回はお試しとして買いましたが袋の中が空っぽになってしまった暁(あかつき)には再度購入することはないであろうということをこの場を借(か)りて申し上げさせていただきます。( ・ิω・ิ)

 「なんの宣言(せんげん)だよ。」と思われるかもしれませんが、経済力のある方には是非(ぜひ)におすすめしたいこの冷凍ブルーベリーであります。何も添加(てんか)されていない純粋(じゅんすい)な果物の甘味をお近くのコンビニやスーパーで手に入れてみてはいかがでしょう?(笑)(^o^)

 

怒りのマグマをチャレンジエネルギーに

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(※画像はイメージです。提供元→Free-PhotosによるPixabayからの画像)

 

 この文章を執筆(しっぴつ)している現在は日本時間で16時53分。このブログ「最寄の本棚」は毎週土曜日17時の投稿を目指しておりますので、この時点で今週もほぼ確実にといいますか確実にアウトと言わざるを得ません。読者の皆様にはご容赦(ようしゃ)していただきたいのと同時に、僕自身誠に悔しい次第であります。

 毎週毎週「今度こそは!」と意気込むもののご覧(らん)の通りです。必要なのは努力と能力、それからスピードとクオリティーとの折り合いです。これから回を重ねるごとに上達していくであろうことに僅(わず)かな希望は抱いておりますものの、私生活共々何かと上手くいかないことが多く、とは言ってもいくこともそれなりにあり、という葛藤(かっとう)のマグマが今にも頭から噴出(ふんしゅつ)してしまいそうではありますが、その熱エネルギーは速やかに「考え方」という名の発電所を通過させ「チャレンジや活力」と称(しょう)される電気エネルギーに変換したいという、何か上手いことでも言ったかのような満足感を勝手に感じつつ、一方で読者貴方(どくしゃきほう)にはフツフツとした不快感を与えたところで本項は締(し)めくくらせていただきます。(;・∀・)

 

最後に

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(※画像はイメージです。提供元→PexelsによるPixabayからの画像)

 

 今週1週間もお互いに何かと疲れましたね。お疲れ様と言い合い、来週もまた精進することにいたしましょう。

 毎度のことですがこのブログに訪問(ほうもん)してくださる方々には本当に感謝あるのみです。お互い、それぞれの道を頑張って進んでいきましょうね。

 僕らは誰もが同じ空の下で毎日を生きています。そしてその空を見上げれば顔も声も名前も知らない人との繋(つな)がりを僕は感じます、というありきたりな言葉を文字に起こしたところで、また来週。

 何か異議申し立て(いぎもうしたて)のある御方(おかた)はコメント欄(らん)からどうぞ。(笑)(・∀・)

 

続きはこちら(2020.9.1付け足し)

hibijuuzitu-syotenn.hatenablog.com

【無料で読める小説とトリックアート!】「井の中の蛙達」-第8話「クルミ」

※この記事はおよそ19分で読めます

最寄の本棚へようこそ♪

 毎週1話ずつ実生活に役立つ知識を盛り込んだ小説を連載しています。僕にとってはこれが処女作なので、かなり未熟さが窺(うかが)えるのではないかと思います。しかしながら、少しずつでも成長して参ります所存です。皆様にはお気が向かれたときに読んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。m(_ _)m 

 

一話はこちら

hibijuuzitu-syotenn.hatenablog.com

 

インフォメーション

 ※今回から、「章」で数えるのではなく「話」に変わります

 ※また、【毎週土曜日17時】の投稿を公言しているのにも関わらず、一日遅れてしまいましたことをお詫び申し上げます。そして、この記事あるいはこの文章を読んでくださっている方がいらっしゃるようであるならば、「ありがとうございます」と申し上げさせていただきます。

 

目次

 

井の中の蛙達」第8話のあらすじ

 同じクラスの女子、東條、後山、神野、にイジメられている小林ゆずほはとあることがキッカケで心強い味方を手にする。そしてついに、話し合いの場が設けられるのだが...

 

井の中の蛙達」第8話「クルミ」本編  

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(トリックアート:最寄 然太(もより ねんた))

 

・1・

 本のページを捲(めく)る。いつもは楽しいはずのその行為が、今日は味気なく感じる。静かな図書室で、今日は私の心にも賑(にぎ)やかさがない。

 ふと本から顔を上げて、壁の掛け時計に目を向ける。昼休みが終わるまでにはまだまだ時間がある。何せまだ始まったばかりなんだから。

 本棚と本棚の隙間(すきま)から見える少し離れたカウンターでは、奥で委員長が本を選別している。その委員長と目が合う。私が来ていることに今気づいたみたいだ。カウンターを出てこちらに駆(か)け寄ってくる。

 「小林さん、来てくれたか。」

「はい。多分、毎日来ます。」

「それはいいことだ。ゆっくりしていくといい。」

「はい。」

「怪我の様子はどうだ?」

「おかげさまで、昨日よりも良くなりました。痛みもかなり引きました。」

「ひとまず安心した。」

「ご心配おかけしました。」

「あのときは私も身の毛がよだったものだよ。」

 そう委員長が言ったとき、入り口から1人の女の子が顔を覗かせた。視線はカウンターに向いている。昨日、委員長と話していた1年生の子だ。

「委員長、来ましたよ。」

「え」

 私の視線を辿(たど)って、委員長の目にも彼女の姿が写ったみたいだ。

「ああ。」微笑んだ委員長が私を見直して続ける。「君は彼女を知っているのかい?」

「昨日、見たんです。委員長と彼女が話しているところを。」

「なるほどな。」委員長はまた微笑んだ。

 入り口から数歩踏み出してカウンターを見た女の子は、切り替えして、出ていこうとしている。委員長がいないからだろう。

「早く行ってあげてください。」 

 委員長は迷った素振りで、手でこめかみをかいている。

「早く早く」

 今にも女の子は出ていってしまう様子だ。私は委員長の背中を無理やり押す。そのとき、負傷している手首が痛んだけど、気にしない。

 委員長は私に押されて、数歩前に進んだけど振り返って、苦笑いを浮かべた。

「いや、しかしな~」

 そう言って、戻ってくる。

「いいからいいから。」

 委員長にこんなに馴れ馴れしくするのは、実は初めてなので、抵抗もある。でも、あの子が可哀想だし、何より委員長の薔薇(ばら)色のハイスクールライフがかかっている。受験生にも恋愛は必要だと思う。とはいっても、私は例外だけど。

 委員長は少しの間、左足のつま先を床に擦(こす)り付けて行く手に迷っていたけど、やがて決心したみたいだ。入り口のドアノブに手を掛けた女の子の方へ、駆け出した。

 が、その途中でまた振り返って捨て台詞を残していった。

 「では、また放課後にな。」

 私はその言葉の意味がわからなかった。放課後?と疑問に思ったときにはもう彼は女の子に声をかけているところで、私の目には彼女の顔が花火のようにパッと明るくなる光景が写った。そして、それこそ花火を見たときと似た幸福感に包まれる。ついでに、あれは恋をしている顔だ、と根拠のないことも呟(つぶや)く。

 それにしても、放課後?委員会のことかな。いや、委員会はいつも金曜日の放課後に開かれる。今日は火曜日だ。なんだろう。委員長の勘違いかな。

 疑問に襲(おそ)われてポカンと見上げた先の壁には、時計が掛けられていた。それを見て急に現実に引き戻される。もう少しで、昼休みが終わってしまう。

 

・2・

 窓の外からは野球部の声が聞こえ、反対側の窓からは吹奏楽部の練習音、廊下にはガヤガヤとした生徒達の声が響いている。

 職員室の前の廊下で、私は担任が来るのを待っている。朝のホールムームが始まる前に、「放課後、職員室来れるか?」と言われたから。彼は今、教室で掃除当番と掃除をしている。

 呼び出された理由には見当がつく。東條達との件だ。昨日、保健室の先生に東條達の事を話した。あのとき、私は親には言わないでほしいと頼んだ。先生はそれに「わかったよ。」と答え「でも、沢口先生とは相談させてね。」と続け、それを私は、あまり気が進まなかったけど承諾(しょうだく)した。

 恐らくこの後、東條達も来る。話し合うのだろうけど、果たしてそれで解決するのかな、と疑念は拭(ぬぐ)えないけど仕方がない。

 幸い、私がささやかに恐れていた事態にはならなかったことに、私は今少しだけホッとしている。それは、職員室の前で担任を待つこの時間に、私と同じ様に東條達も近くにいる、という状況だ。もしもそうなれば、何かされるかもしれない。ただ、場所が場所で職員室前なのだから、されない可能性の方が格段に高い。どちらにしても、私は想像するだけでお腹の底がズーンと重くなった。ところが、東條の班が今週の教室清掃の当番だったので、その状態は回避された。東條が来なければ、後山(うしろやま)も神野(かの)も来ない。彼女等のようなおかしな関係ほど団結力が強いのはなぜだろうと、私は少し疑問に思ったりもした。もしも、あの3人が分裂したのなら、私へのイジメはなくなるのかもしれない。

 近くの階段を下校ラッシュの生徒が途切れることなく、次々と降りていく。それをぼんやりと見つめていた私に向けて、そのうちの1人が手を上げ駆け寄って来る。荷物を背負ったその生徒は、委員長だった。昼休みに彼が言い残した台詞が思い起こされる。「では、また放課後にな。」まるで予言みたいだ、と私は驚いた。私と会うことを予期していたというのか。

 「先生はまだ来ていないようだね。」

 と目の前の委員長はそう言うけど、なんのことだかわからない。ポカンと口を開ける私と同じく、彼はその横の床にリュックを下ろしながら腰も下ろし、私の顔を不思議そうに眺(なが)める。

 「えっと、どなたのことを言っているんですか?」

「君の担任の沢口先生だよ。もしや、彼から聞かされなかったのか?」

「何をですか。」

「今日の話し合いには、私も証人として立ち会うのだよ。」

 それを聞いた私は嬉しさと安堵(あんど)で、わかりやすく表情を明るく変えたのだと思う。私を見る委員長の口角が上がる。

 「今朝方、彼が私のいる教室までわざわざ来てくれてな。」

 先生の事を彼と呼ぶのは委員長らしい。

「そうだったんですね。なんか、ありがとうございます。」

「少しでも君の力になれると良いのだが。」

 視線をそらした委員長はリュックに手をかけて続ける。

「ところで、小林さん。」

「はい。」

「昼休みは終始図書室に来てくれているわけだが、昼食はどうしている?」

「家に帰ってから食べるようにしています。」

「では、まだその中に?」

 彼は私のリュクを指差した。

「いえ、家です。」と言ったところで、付け加える。「あ、これダジャレじゃないですからね。」と訂正したものの、それすらくだらなく思えて少し笑う。

「なかなか、いいじゃないか。」

 予想外の言葉がなぜか嬉しい。委員長は決して他人を傷つけるようなことは言わずに、むしろ相手に小さな幸せを与えるような話し方をする。少しズレているところもあるけど、私には真似できない。だから瞬とはいつも喧嘩(けんか)をしてばかりだ。

 ところが、彼は続けて予想外の発言をした。

「君、ひょっとして入っていたか?」

 わけがわからず、すかさず聞き返す。

「何にですか?」

「ダジャレ部。」

「そんな部活ありましたっけ?」

「私もわからん。」

「は」

 突然の意味不明な会話に困惑(こんわく)したけど、軌道修正(きどうしゅうせい)を試みた。

 「この猛暑では帰る頃には確実に悪くなってしまいますからね。家の冷蔵庫にしまってあります。」

 ママが家を出た後で、毎朝テーブルに置いて行ってくれるお弁当を冷蔵庫にこっそりしまい、帰って来てから温め直して食べる。これは、先週の教訓から考えた私なりの対策で、同時に今日から始めた新たな試みでもある。実践1日目の感想は、意外とイケる、というもので空腹は我慢できる程度。

 「では、これをお食べ。」

 そう言ってモゾモゾと自分の荷物を弄(まさぐ)った委員長の手には、ファスナーがついた袋があり、そこには〈大容量!生クルミ〉とプリントされてある。

クルミ...。」

「うむ、正(まさ)しく。」

「なんで、クルミ、なんですか?」

「これはいわゆる、私の昼食だ。」

「これが、ですか...。」

「おや、クルミを侮(あなど)ってはいかんぞ。」

「別に侮ってはいませんけど。」

「侮りたい表情をしている。」

「侮りたい表情ってなんですか?」

「私にもわからん。」

「は」

「は」

「え」

 わけがわからない沈黙が流れた。

 「いや、あの、お昼ごはんがクルミだけって、そんなに食べられますか?」

「お昼ごはんと言えど、私は間食程度につまむだけだからな。それに、他にもヨーグルトとブルーベリーを摂取(せっしゅ)する。」

「なるほど、健康的ですね。でも、それだけで足りますか?」

「脳への栄養補給という点では十分ではないかと考えている。それに、食後の血糖値が上昇しにくい俗に言う低GI食品(ていじーあいしょくひん)であるから、眠くならないしな。」

「はあ...」

 合理的と言うかなんというか、流石、委員長だ。私は口を開けたままコクコクとうなずきながら感心してしまった。

 「ほい。」委員長は袋を持った右手を差し出す。「この後に備えて、ブドウ糖を補給しておくといい。」

ブドウ糖?」

「脳の働きには欠かせないものだ。」

「そうなんですか。」

「ああ。しかし、早くしなければ彼等が来てしまうぞ。」

 「では、お言葉に甘えて。」

 広げた両手の平に、大胆にクルミがゴロゴロと乗る。それらを左手に寄せて、空いた右手で1つつまんで口に放り込む。ゴツゴツとした食感を感じながら、コリっと奥歯で噛み砕くと舌の上にほんのりとした苦味と同時に少し香ばしさが広がった。

 「クルミって意外と美味しいんですね。」

 説得力のある委員長がくれたものだから間違いないという思い込みもあるのか、脳みその様にうねうねとした小さなこの塊(かたまり)の中に物凄いエネルギーが濃縮されているような感じがしてとても心強かった。頼むよ、クルミ。頼むよ、ブドウ糖

 

 掌(てのひら)1杯分の栄養素がついに最後の1つになったちょうどそのとき、廊下の向こうに担任とその後ろに続くアイツラの姿が見えた。

 最後のクルミに祈りを込めて噛み砕きながら、『もう終わって。私は普通の生活がしたいだけ。』と願う。

 立ち上がる私の横で、委員長も同じくノシっと起き上がりながら言う。「頑張ろうな。」

「よろしくお願いします。」

 すごそこまでやって来た東條が、何やら楽しげに笑った。「あっ!図書室の主だ!」

「いかにも、私が図書室の主だが。」

 『何を笑っているんだ。』と奴(やつ)を睨(にら)む私の後ろで、委員長は極めて愛想よく応じた。そうしたのはきっと私のためで、敵対するこの状況を少しでも良い方向に持っていこうとしてくれているんだと思う。クルミの破片がまだ口の中に残っている。彼はこのクルミ以上に偉大だ。

 担任は私の肩に手を置いて「じゃあ、行こうか。」と微笑んだけど、私は不安しか感じなかった。これから和解交渉(わかいこうしょう)をする相手は話が通じる人間だとは思えない。本当にこれで解決するんだろうか。

 彼はすぐそこの職員室の扉を開けるものだと私は思っていたけど、その予想に反して扉を素通りして廊下の奥へと進む。その背中を追って歩いている途中で東條が「なんで委員長がいるの?」と質問し、委員長は「それはこの後でわかるよ。」と笑いかけたけど、『接点のない年上にタメ口かよ。』と私は心の中で毒づいていた。後山と神野はといえば、いつもの下品な笑い方とは打って変わっておしとやかな笑みを浮かべている。『まったく、イケメンには目がない奴らだ。』と私は更に毒づいた。

 交渉の場は「多目的室B」だった。窓から差し込む紅色の夕日に染められた室内は、ひっそりと静まり返っていて、そして教室とは違う独特のゴムのような匂いにしっとりと包み込まれていた。

 沢口先生が、足にキャスターが取り付けられてある灰色の長机や、パイプ椅子を移動させるガチャガチャという音が響く。そして、両手で指して「どうぞ」と言う。

 各人が着席したあと、話を切り出したのは言うまでもなく先生だった。

「今日みんなに残ってもらったのは、小林の怪我のことだ。」

そう言って私を見る先生に続いて、みんなもこちらに顔を向ける。

「小林は昨日、階段から落ちたそうなんだ。そうだね?小林?」

正確には『落とされた』だけど、細かいところを一々(いちいち)指摘するのもどうかと思った。

「はい。」

 それを見て答えるようにうなずいた彼は、東條達が座る方に視線を移した。

「それでね、そのとき、そこには君たちがいたそうなん...」

「すみません。」

先生が言い終わる前に東條が言った。私は驚きのあまり、耳を疑った。

「多分、私がぶつかっちゃったんだと思います。」

 「ぶつかっちゃった」。コイツの良心を少しでも信じた自分が恥ずかしい。あれは事件ではなく事故だと、そう言いたいわけだ。全身がカーッと熱くなるのがありありと感じられる。

「そうか、よ...」

「ぶつかっちゃった?」

またしても先生の台詞(せりふ)は中断され、それは委員長によるものだった。高音と低音とが混ざりあったような特徴的な彼の声が、今は鋭い低音に変わっていた。どんな喧騒(けんそう)の中でも聞こえるような、そんな強さを持つ声だと私は瞬時に感じた。

 「はい?」

東條が透き通った弱々しい声で聞き返した。今日の彼女は少なくともこの部屋の中では極めて淑女(しゅくじょ)として応じるようだった。

「押した、の誤(あやま)りでは?」

「どういうことですか?」 

そう言いながら申し訳無さそうに肩をすくめる彼女の姿は、被害者の私ですら少し可哀想(かわいそう)になるほどだったけど、目は本性を隠しきれていなかった。「目は口ほどに物を言う」とよく言うけれど、今は「目は口の100倍は物を言う」だ。それに見つめられればすぐさま石にでもされてしまうかのような眼力からは、夕焼けよりも赤々とした光線が今にも発射されておかしくはない。委員長は焼き尽くされてしまうかもしれない。ところが、委員長を見ると彼の目玉からも非常な何かが発せられていた。その目を一度でも覗(のぞ)き込めば、あっという間にありとあらゆる知識で溢(あふ)れる大海原に放り込まれ、二進も三進も行くことは許されず何をすることもできないまま黙りこくるのが精一杯、というような圧倒的な知的さがそこからは伝わってきた。

 西日に真っ赤に染(そ)められた二人は今にも立ち上がり、目まぐるしいまさに目と目の闘争(とうそう)を開幕させてしまうのではないかと、私の心と頭は穏やかではなかった。

 

つづく...

 9話は本記事の最下部から(2020.8.24付け足し)

解説

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(※画像はイメージです。提供元→Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像)

 今回から、一話ごとに自ら解説をさせていただきます。僕は現在、「心理学や精神医学などの知識を用いて読者の人生に少しでも良い影響を与えることができればいいな」という思いで本作品を毎週連載(まいしゅうれんさい)しているわけですが、この「解説」の項では主に、その知識について更に掘り下げて書いていきます。よろしければ、お役立てくださると幸いです。

(※作中にはまだあまり知識を盛り込めていませんが、これから物語が進んでいくにつれ増量していく所存です。)

 

低GI食品の間食で効率的エネルギーチャージ!

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(※画像はイメージです。提供元→Free-PhotosによるPixabayからの画像)

 血糖値は波のように上下しており、上がればその後必ず下がります。食後の血糖値の上昇が激しい「高GI食品」は一時的には活力をみなぎらせてくれますが、残念なことにその効果はすぐに0になり終(しま)いにはマイナスになります。つまり、食べることでエネルギーは摂取できますが、疲れが残ってしまうということです。

 ここで登場するのが「低GI食品です。低GI食品とは、もうおわかりかもしれませんが、食べた後の血糖値の上昇が少ない食べ物のことを差します。つまり、食べた後の疲れが少なく効率的に活動に必要なエネルギーを補給できるのです。

 それを委員長は知っていたわけですね。彼は昼食と称した間食でクルミとヨーグルトとブルーベリーを食べると言っていました。これはどれも低GI食品であり、かつ栄養価が高い食べ物です。

 ただ、もちろん食べ過ぎはよくありませんのでご注意くださいね

 クルミは一日に20g(一個が約2gなので10個ということになります。だいたい片手に乗るくらいです。)

 ヨーグルトとブルーベリーは...すみません。あまり詳しくは知らないのですが、両手に収まる程度がよろしいのではないかと思います。

 

情報元

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(※画像はイメージです。提供元→Michal JarmolukによるPixabayからの画像〉

 メンタリストDaiGoさんをご存知でしょうか?

 彼は現在、人生に役立つ心理学などの幅広い知識を書籍や動画配信で公開しています。僕の人生は、それらの情報を読んだり見たりし始めてから変わったと言っても過言ではありません。それが始まりとなって、今や僕は科学的知識に魅了される人間の一人になりました。僕の知識は彼の足元にも及びませんが、僕は僕なりに彼とは違ったアプローチ(絵や小説という芸術を用いた)で誰かのお役に立てればと思い、拙くながら「井の中の蛙達」を描き続けているわけです。

 さて、あなたのためを思えば、こんな吹けば飛ぶようなブログを御覧になっているよりも、彼の本や動画を1分でも目にしていただいた方がよろしいかと、言いたいところではありますがやはりこの「最寄の本棚」にも寄り道程度に訪れていただきたいものです。しかしながら、「メンタリストDaiGo」さんの知識には図りし得ない価値がありますので、ご紹介させていただきます。

 

メンタリストDaiGo「自分を操る超集中力」 

 本記事内でご紹介しました「低GI食品」や「クルミ」の

ことも載っていますが、それはこの本から見ればほんの一握り、いえほんの指先にも及びません。

 また、知識量に負けず劣らず読みやすさも抜群に良いので、是非の一読をおすすめいたします。

 以下は類似リンクです。

 

Amazon〉 

自分を操る超集中力

自分を操る超集中力

 

 

〈オーディオブック〉

 食器洗いや洗濯物干しなどの慣れた作業なら、思考を司る前頭葉ではなく小脳が使われており無意識にでもできるので、それをしながら耳でオーディオブックを聴いて知識を吸収することはおすすめの方法です。

audiobook.jp

 

〈メンタリストDaiGoのYouTubeチャンネル〉

 まずはここから始めることをおすすめいたします。無料です。

www.youtube.com

 

 いかがでしたでしょうか?

 初めての解説で正確性や具体性に欠けているとは思いますが、少しずつ成長していきたいと思っています。

 

おまけという名の雑談

 さて、これまた今回からの試みで、記事の最後は雑談で締めくくりたいと思います(^o^)。内容は、このブログは一週間おきの更新ということで「一週間を振り返って」にします。

 では、まったりとお話ししていこうと思います。

 あなたの一週間はどんなものだったでしょうか?(*´ω`*)

散歩にもおすすめ!マリンシューズ

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(※画像はイメージです。提供元→TabeajaichhaltによるPixabayからの画像)

 僕は先週家に届いた「マリンシューズ」を履いて散歩に出かけるのがささやかな楽しみでした。「マリンシューズ」とはその名の通り海で履く靴です。中に水が入ってもすぐに排出されるように、靴底などの至るところに小さな穴が空いているので通気性最高、尚且(なおかつ)軽量。とても履き心地が良いのです♪(・∀・)

 ちなみに、僕が買ったのはこれです。

www.amazon.co.jp

 今の所、強度も問題なしで快適です♪\(^o^)/

 

クルミの間食導入で作業効率ユーピー!

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(※画像はイメージです。提供元→Pera DetlicによるPixabayからの画像)

 そしてなんと言っても、委員長のように僕も今週からクルミを間食に取り入れました。ここ1ヶ月くらいの僕は一日一食の生活だったのですが、それではなんだか作業中に疲れに襲われるようになってしまったので、先述したメンタリストDaiGoさんの「超集中力」を久しぶりにオーディオブックで聞いた後で、完食としてクルミを食べることにしたのです。(´~`)モグモグ

 これが驚くなかれ。効果覿面(こうかてきめん)でございました。ここ2日くらいはフルーツも摂取することによってさらに効率がUPしております。(´∀`∩)↑age↑

 皆様もよろしければお試しあれ♪

 

 それではまた一週間、皆様、共に成長することにいたしましょう。

 ここまで読んでくださった方がいるのであれば、それは本当に嬉しくそしてありがたいことです。何かと不安定なブログですがよろしければ、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

ではでは、また来週!(*´∀`)

 

続きはこちら(2020.8.24付け足し)

hibijuuzitu-syotenn.hatenablog.com