虐待を受けた少年はトラウマを抱えて生きていく。里子時代の苦悩「"It(それ)"と呼ばれた子 少年期 ロストボーイ<デイヴ・ペルザー/著>」

虐待を受けた少年の救出後を知りたい人におすすめの記事!

 

 あなたは世界にはびこる児童虐待についてどう思われますか?

何の罪もない子供が、大人の手によって地獄へ突き落とされるのです。

実に理不尽だと僕は思います。

 しかし、そのような現実があることは知っていても、それは単に事の輪郭に触れただけに過ぎません。

やはり、実際に経験した人にしかわからないことがあるのです。

ですからもし、児童虐待についての理解をさらに深めたいのであれば、虐待を生き抜いた人の話に目を向けて学んでいく必要があります。

 

目次

 

出典「”It(それ)”と呼ばれた子 少年期 ロストボーイ <デイヴ・ペルザー/著>」

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 あなたは、長い間虐待を受けた児童が保護された後、どんな環境で生きていくのかを存知でしょうか?

僕はこの本を読むまで、そんなことは考えたことすらありませんでした。

救出されればその子は助かるものだと、無意識の内に思い込んでいたのです。

しかし現実はそうはいきません。

そんなに単純ではないことを、教えてくれる一冊です。

 

助けて、支えてくれたのは赤の他人

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  ここで一つ質問があります。

身近にいて、いつもあなたを思ってくれる人は誰でしょうか?

少しむず痒かったり気恥ずかしかったりするかもしれませんが、あなたの頭にはすでにその人の顔が浮かんでいるのではないでしょうか?

 ところで多くの子供にとっての大切な人は、何と言っても親でしょう。

しかし、デイブ氏はそうではありませんでした

支えてくれるどころか、殴られ蹴られは当たり前

ガスコンロで腕を焼かれ、アンモニアを飲まされ、何日も食料を与えてもらえず、いつ死んでしまってもおかしくない状態でした。

そんな彼を救ったのは、学校や警察、ソーシャルワーカー、そして里親でした。

そして心に深い傷を負った少年のその後の人生を献身的に支えたのは、ソーシャルワーカーや里親、近所の住人、そして数少ない親友でした。 

驚くことに彼のために必死になってくれたのは実の親ではなく、赤の他人だったのです。

これを読んであなたはどう思われるでしょうか?

僕はこんな溜息で溢れかえっているような世界にも、まだ希望があるのだと思うとなんだか嬉しくなりました。

絶望も希望もあるこの世界

どちらも知っておくことはとても意義深いことだと思います。

 

救うのも救われるのも容易ではない現実

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  あなたは誰かを絶望の窮地から救い出したことがあるでしょうか?

もしあるのであれば、それは凄いことだと思います。

そう簡単にできることではありません。

しかしもし心当たりが無かったとしても、それは普通のことです。

それに絶望の窮地とまでは言わなくても、あなたは誰かの助けになったことはあるのではないでしょうか?

泣いている子供を慰めてあげた。

電車で席を譲ってあげた。

同僚の仕事を手伝ってあげた。

など、どんなに些細なことでもいいので一度思い出してみてください。

あまり自分のことが好きではない方も、自分の意外な優しさを再発見できたのではないでしょうか?

 しかしそうは言っても、人を救うことが難しいのも事実

場合によっては救う方も救われる方も懸命に努力したのにも関わらず、崖っぷちまで追い詰められてしまうこともあります。

著者の過去がまさにそうでした。

子供の頃の彼は助けて欲しいと強く願っていましたし、学校やソーシャルワーカー、里親など、周りの大人も本当に助けたいと思っていたはずです。

ですが彼が根本的に脱出するためには、本人が正しい選択をすること、過去の傷や罪悪感、母への未練を断ち切ることが必要でした。

もがき苦しみながら進んでいくデイブ少年の葛藤の日々が続きます。 

 

子供と共に苦しみ立ち向かう。里親の意義深さ。

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  様々な過去を持つ里子達

その苦しみに共に向き合おうとする存在がいました。

それは里親です。

子供と共に暮らすだけでも大変なことですが、それに加えて当時のアメリカはまだ里親制度への理解が浸透しておらず、彼らを補助金泥棒などと罵る人も少なくありませんでした。

それでも里親になった彼らは、自分の人生を捧げる覚悟だったのでしょう。

彼らがいなければ今日のデイブ氏はいなかったはずです。

腹を黒く光らせる大人がいる一方で、暗闇に輝きを与える大人もいる。

デイブ氏の周りにいた里親たちは本当に意義深いことをしたと思います。

あなたはどう思われるでしょうか?

 

まとめ

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   虐待の暗い渦の中からデイブ少年を救い出した、数多くの出会い

一番身近で本来ならば命を呈してでも守ってくれるはずの存在に、殺されるかもしれないと怯えていた日々

世界の光と闇を感じずにはいられません。

 あなたも大小はともあれ生きていれば辛いこともあるでしょう。

逃げたくなることもあるでしょう。

 幼いながらも数々の困難を乗り越えた彼の物語は、一見目を背けたくなるようなものでも、読み終わる頃には丸まった読者の背中を優しく押してくれます。