最寄りの本棚へようこそ。
今回は 芸術 ★知識 雑談 です!
あなたは「"It"と呼ばれた子」をご存知でしょうか?
これはかなり有名な本なのですが、米国カルフォルニア州史上最悪とも言われた壮絶な児童虐待のノンフィクションです。
著者はデイヴ・ペルザーさん。
この虐待を奇跡的に生き抜いた被害者本人です。
彼は長い間、実の母親からとても残酷なことをされていました。
内容は、ガスコンロで腕を焼かれたり、アンモニア(かなりの刺激物)を飲まされたりなどです。
さて、その母親がその後どうなったのか、気になる方も多いのではないでしょうか?
今回は、「”It”と呼ばれた子」を5部作(幼年期、少年期、完結編、青春編、指南編)とも読んだ僕、最寄然太〈もより ねんた〉が、
☑デイヴさんの母親はその後どうなったのか?
を書いていきます。
「虐待」という罪が罰せられることはなかった?
学校と警察の協力によって救出された後、デイヴさんと母親は裁判所で再会しました。
その裁判でデイヴさんが勇気を振り絞って母親との離れを決断したことで、裁判所の監護のもと18歳の誕生日まで保護されることになったのです。
これでデイヴさんの安全はひとまず確保されました。
とはいえ、母親が犯した「虐待」の罪に対して、逮捕などの何か法的な制裁が加えられたかどうかは文中には書かれていません。
が、文面から見る限り、母親の生活はデイヴさんがいなくなったこと以外には変わりがなかったようです。
また、デイヴさんには兄弟が数人いるのですが、その兄弟たちが次の「行為」のターゲットになっていたことも後からわかります。
僕は法律に詳しくないので本当のことはわかりませんが、やはり1970年代の当時はまだ虐待に対しての問題意識が今よりも低く、制度が整備されていなかったのでしょう。
そのため、被害者の保護はかろうじて行われましたが、加害者本人や次に被害にあう可能性の高い子どもへのアフターケアは為されていなかったのだと思います。
それに比べれば今はまだ「まし」になったのでしょうが、世界にはまだ理不尽な目にあっている子どもが大勢います。
デイヴが31歳のとき、母親は寝ている間に心臓発作で死亡
デイヴさんは12歳のときに学校が警察に通報したことで救出されました。
その後は里親に引き取られ、数々の難題にぶつかりながらも成長していきます。
ある日、大人になったデイヴさんは母親の家を訪ねます。
彼は過去に自分がひどい仕打ちを受けていた家で、勇気を持って母親と向かい合いました。
家はゴミや犬の糞、タバコのヤニで異臭が立ち込めています。
そんな部屋で目の前に座っている母はもう先は長くない様子でした。
手は頻りに震えそれを必死に抑えるように酒を飲みます。
そしてある日とうとう、彼女は眠っている間の心臓発作で永遠の眠りについたのでした。
他人への憎しみに壊されてしまった人生
大小ともあれ、この世界の誰もが辛さを抱えて生きています。
デイヴさんの母親もその例外ではなかったのでしょう。
しかし文中に彼女の苦しみや、何か精神的な病気を患っていたのかは詳しく書かれていません。
ただ、彼女もその母親(デイヴさんからは祖母に当たる)に幼い頃、精神的、肉体的な虐待をされていたような表現は少しありました。
もしかすると、そのときに密かに膨れ上がった憎しみが何倍にもなってデイヴさんに降り注がれたのかもしれません。
詳しい所は想像することしかできませんが、とにかく彼女は他人への憎しみに自分の人生を潰されてしまいました。
様々な怒りの矛先を他人に向ける彼女の行為は、ある時期は自分を守るために必要だったのかもしれません。
しかし、それが結局は自分で自分の首を締めることに留まらず、大切な人を巻き込んでの惨劇に発展してしまったのです。
人間は基本的に弱い生き物ですから、辛い現実を受け入れることは容易なことではありません。
しかし、苦労しながらも長い時間をかけてでもやはり向き合っていく必要があります。
簡単なことではないのですが...。
最後に
デイヴさんの母親は紛れもなく児童虐待の加害者です。
それに変わりはありませんが、誰しも様々なことから影響を受けているわけで、彼女を「根本からの悪人だ」と全否定する気には僕はなれません。
彼女1人を悪者に吊るし上げるのは簡単ですが、そんなことをすれば僕達のいるこの世界はますます悪化してしまうと僕は思います。
僕等がやるべきなのは、この悲劇から少しでも多くの教訓を学び取り大切な今やこの先の世代に繋げることではないでしょうか?