漫画「月曜日の友達」僕らだけの月曜夜の校庭。私達だけ、子供のままだ。

 今回は阿部共実さんの漫画「月曜日の友達」をネタバレ無しでご紹介します!

 

【目次】

 

あらすじ~はぐれ者の君が私にとっては特別

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 中学。小学とは別世界。皆が大人になる。心が一人になる。

 誰もいない月曜日の夜、校庭。その日、沢山の机が置かれて、色とりどりのゴムボールが宙を舞っていた。そこで出会ったんだ。かけがえのない特別と。

 

 

読みやすい2冊完結~2巻からが醍醐味! 

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  まず、読了までの時間目安です。個人談ですが、僕は普段漫画よりも小説をよく読むのですが、今回この「月曜日の友達」を読んで漫画の読みやすさに改めて気づきました。僕の読むスピードは小説ならばだいたい1冊6時間程度。それが漫画だと、計測したわけではないのですが1冊1時間もかからなかったと思います。なので2冊で2時間、時間で言えば映画を見るようなものでしょうか。

 さて、内容の読みやすさですが、主人公が個性的なこともあるのか、作者・阿部共実さん節なのか、文には少しお硬い感じのところもありますが、小説のような表現力と趣があります。初めは少し違和感があるかもしれませんが、読んでいくうちにいつのまにか慣れていくと思います。

 

子供と大人の狭間で...

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 中学1年生。学年が1つ上がったことに小学校とは変わりありませんが、自分を取り巻く環境、自分に求められるものには驚くほど変化がある時期です。それは地域にや人によって様々ですが、例えば、同級生も先生も知らない人ばかりになり、窮屈な制服を毎日着て、勉強はより一層難しく複雑になる、など。そして何より、周りも自分も急に大人へと近づいた気がします。とはいえ中身はまだ子供。そんな眩しくも目まぐるしい日々が始まるのです。

 僕は中学に上がるときに引っ越したので、周りには本当に知らない人ばかりでした。一人きりの昼休みが苦痛で仕方なかったことを今でも覚えています(笑)。

 「月曜日の友達」の主人公・水谷も中学1年生。周りの友達が急に大人になったことに驚きを感じつつも、彼女なりの日々を乗り越えていきます。

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独特の切なさ、人恋しさ

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 社会人として忙しく毎日を生きていると、ふと忘れていた昔のことを思い出す瞬間があると思います。まだ幼かった小学生、中学生の自分。様々なタラレバが過りつつも、胸が締め付けられるような切なさや甘酸っぱさが胸にあふれて、「あの頃に戻りたい」と呟いてしまうこともあるかもしれません。何年もあっていない親友や恋人の顔が出てきて、今どうしているのか知りたくなることもあるでしょう。あるいは、葛藤を抱えながらも一生懸命に生きる少年少女の自分の姿が愛おしくなるかもしれませんね。

 そんな胸がキュッとなるけれどその一方で安らぎのある感情が、この作品にも僕は感じ取れました。羨ましくなるほど素晴らしい出会い、友情、思い出が2冊に詰まっています

 

キーパーソン・月野というキャラクター

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 主人公・水谷茜と共に「月曜日の友達」には欠かせない人物・月野透。陶器人形のような容姿を持つ美男子です。周りを寄せ付けないクールな印象ですが、無邪気で可愛い子どもの一面もある不思議な男の子。物語を読み進めて彼が放つ独特な雰囲気と彼の背景を知る頃には、月野少年の魅力は一層際立っているはずです。

 物語を読み終えた後、僕の胸には「俺も中学生の時、もっと月野みたいに深く物事を考えられたら、違ってたのかもな。」と少々の後悔がこみ上げましたが、それで良いのだと思うことにしています。今の自分を全面的に肯定するわけではありませんが、あの頃の自分がいたからこそ今の僕がいるのです。あの頃の僕でなければ、僕は僕ではないのです。

 

夜、学校、超能力、不思議な世界観

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 水谷と月野の出会いは多くの読者にとって実に印象的であったはずです。夜の校庭に何故か机、そして宙を舞う色とりどりのボール。その中で2人、ばったり。月野は「自分は超能力が使える」と言いますが、そもそも超能力なんてあるのか。その真相を追うのも物語を楽しめる1つの要素です。

 何はともあれ、ラストには幻想的かつ感動的な風景を読者は目撃することになります。個人的にはそのラストの月野の台詞に胸を打たれました。僕が当時求めていた言葉がそこにあったからです。

 

漫画「月曜日の友達」を楽しむためのプラスα!

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 読んでいくうちに気づくと思いますが、登場人物を集めると月火水木金土日と1週間になります。そのうちの火と木を2つも占める「火木」という女の子が登場するのですが、彼女はあなたの目にはどう映るのか。

 

番外編がamazarashi「月曜日」PVにて公開!

 amazarashiというバンドはご存知でしょうか?僕が大好きなバンドなのですが、人によって好き嫌いはけっこう別れます。

 まあそれはともかく、そのamazarashiの曲に「月曜日」というものがあるのですが、なんと今回ご紹介している漫画「月曜日の友達」の主題歌なのです。アニメや映画などでは主題歌とはよく聞きますが、漫画に主題歌があるというのはあまり聞かないかもしれません。少し調べたところによるとどうやら、作者の阿部共実さんはもとよりamazarashiのファンで、逆にamazarashiのボーカル・秋田ひろむさんは、阿部共実さんの過去作「ちーちゃんはちょっと足りないf:id:nenta-moyori:20210303005309j:plainが好きで、という偶然もあってかこのようなタイアップが実現したようであります。amazarashiがこの漫画のために書き下ろした曲です。

 その「月曜日」、僕は元々amazarashiが好きだったので何度も聴いていましたが、聴いたことのない読者、読む前の方にも是非聴いてほしいです。というのも、この2つはまるで水谷と月野のように互いが互いを引き立て合っているのです。「月曜日」を聴いてから「月曜日の友達」を読むと、曲の歌詞が漫画の台詞や風景に登場して曲の謎が少しずつ解けていき、読了後にはもう一度「月曜日」を聴きたくなります。「月曜日の友達」を読んでから「月曜日」を聴くと、水谷や月野などの登場人物たちが織り成す感動を音楽という形でもう一度噛みしめることができると思います。

 僕の大好きな本当に、いい作品です。

 と、危うく大切なことを書き忘れてしまいそうになりましたが、そうそう、「月曜日」のPVには阿部共実さんがそのためだけに書き下ろしたアナザーストーリーが収録されています。月野と水谷の会話です。是非チェックしてみてください♪

 普通にも当たり前にもなれなかった僕らは せめて特別な人間になりたかった 特別な人間にもなれなかった僕らは せめて認め合う人間が必要だった それが君で おそらく僕で ゴミ箱にだって あぶれた僕らで 僕にとって君は とっくの昔に 特別になってしまったんだよ

amazarashi「月曜日」より引用)

  これは「月曜日」の中で僕が特に好きな歌詞です。「月曜日の友達」終盤の水谷の台詞が重なりますが、僕にはこうも思えるのです。

 「僕」というフレーズは音楽では女性の一人称としても使われることも多くあるようですが、この曲ではやはり男性の一人称ではないかと個人的には思っています。確かに水谷の台詞に被る部分はありますが、同様に月野の台詞にも通ずる箇所があるのです。つまり僕が提唱したいのは、「月曜日」は月野の目線で書かれた曲という説です。そう考えるとなおさら切なさが胸にこみ上げてきたりします。

 

最後に~大切な存在を大切に

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 とても味深く趣のある作品です。僕は読んでる最中、読み終わった後、現在の自分が孤独なこともあるのかとても友達が恋しくなりました。そして水谷と月野、それから〇〇〇(ネタバレ防止のためとある人物の名を〇に変えています)がこれからも友達、いや親友として共に中学2年、3年、そしてその後の人生をたくましく生きていってくれることを切に祈りました。とはいえ大切な存在だからといってずっと一緒にいなくてもいいのです。あくまでもそれぞれの人生を各々の足で進みながら、例え遠く離れ離れになってしまったとしても、またいつか巡り会う事ができたらそれはこの上なく幸せなことですよね。

 とまあ、フィクションの人物達にここまで感情移入してしまいましたが、それほど良い作品なのです。これを読んでも読まなくても、あなたの身近にいる大切な存在が一瞬でも、以前にも増して際立って大切に見えますように。それでは今回はこれでお別れです。ここまで読んでいただきありがとうございました。また次回、お会いしましょう!

 

情報 / 試し読みなどの外部リンクもあり

  • 発行日:第1巻→2017年9月4日初版第1刷発行 / 第2巻→2018年2月28日初版第1刷発行
  • 出版社:小学館
  • 価格:552円+税

 

 ※以下の画像は少々のネタバレを含みます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(2021.4.10更新)