9/6無料で短い【一週間小説~人生を良くするエビデンスを小説に】1週

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今回から「雑談」は「一週間小説」と名前を変えて、単独で1記事として投稿していきます。一週間小説の内容は以下の通りです。

  • 筆者の1週間の幸福や苦悩などを小説化
  • 読むだけで、人生を良くするエビデンス(科学的根拠)に基づいた知識を得られ、畏敬(いけい)や畏怖(いふ)の念を抱くような芸術的面白さがあり、その他にも様々なメリットが得られる、そんな小説を目指します

今後とも、よろしくお願いします。\(^o^)/

 

 「旧友との謎のチャレンジ」【毎週土曜日17時投稿】

※物語にするにあたって少々の誇張はありますが、事実の道筋から道草程度に収まるように努めています。

※画像はイメージです

 月曜日、小学校からの旧友と4年間ぶりに再会した。1時間はかかろうかという長い道のりを2人で歩きながら、思い出話しや互いの近況話しに花を咲かせた。

 やがて焼き肉の60分食べ放題コースを共に貪(むさぼ)り食ったあと、再び片道1時間の帰路に就(つ)いた。しかしこれだけで終わりとはならない。我々は当初から偉大なる挑戦を胸に秘めてその日を迎えたからである。その挑戦とはつまり、『女子やカップルしかいないであろう黄色い雰囲気漂うパンケーキ屋の眩(まばゆ)いほどに彩り豊かなパンケーキを野郎二人でただひたすらに貪り食う』というものだ。これは想像以上に苦痛であるに違いなく、僕たちはそれにマゾヒスティックな快感を求めていたのだ。

 その地獄とも天国とも言える店を当てもなく探して街をブラブラと歩いたものの、予想に反してそんな店など一向に見当たらない。ひょっとすると心の中に潜む逃避願望がその視界に靄(もや)をかけているのかもしれないが、そんなことで揺(ゆ)らぐ挑戦ではない。

 根気よく神経を研ぎ澄ませながらすでに痛み始めている両足で地面を蹴り続けていると、やがて1件のタピオカ屋が目に止まった。当初の手はずとは少し違うものの、黄色い空気の中で野郎2人という疎外感(そがいかん)を味わえることには大差ない。「ここにしよう。」と言う友人と共に店先に置かれた立て看板を見つめる。

 そのときだった。すでに自分の注文を決めていた友人が、目の前に広がるカラフル達に圧倒(あっとう)されていた僕に言った。

「へぎそば食えば?」

「え」

よく目を凝らしてみると、確かに『へぎそば』という表記がある。そして隣にはまさしくねずみ色の麺が綺麗(きれい)にざるに並べられた写真が添(そ)えられているのだ。僕は一瞬の迷いの果に、「おしゃれなカフェで坊主頭(ぼうずあたま)がそばを啜(すす)るのも悪くないな」という境地に至(いた)った。

 そもそも「へぎそば」とはなんぞや。それはつまり、布海苔(ふのり)がつなぎに使われた新潟県発祥のそばである。

 こういうことは考える前に行動すべし。

「僕はへぎそばで。」

30代前半くらいの女性店員がそれに満面の笑みを返してくれるので僕はかなり救われた。進められるがあまり、「黒糖タピオカラテ」も注文してしまったのは財布にも健康にも痛手ではあったが、今日は状況が状況でありつべこべ言うよりも友との時間を楽しむことが最優先だ。チートデイとも言おうか。

 

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 ちなみにここで少し健康についてうんちくを傾けるならば、焼き肉屋で僕が食した牛や豚などの「赤い肉」と「白米」は望ましいものとは言えない。できれば「赤い肉」は「鶏肉」に変え白米などの精製された「白い炭水化物」は玄米やそばなどのできるだけ精製されていない「茶色い炭水化物」に変えるべきなのだ。これは最近、津川友介氏の「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」という本を読んで得た知識なのだが、これを知ったとき、僕は正直驚愕(きょうがく)した。しかしエビデンスに基づいた質の高い情報であるから興味深いものだ。とはいえ繰り返しになるが、今日はつべこべ言っている場合ではなく友人との冒険を満喫(まんきつ)することが最重要だ。

 

 「お2階でお待ち下さい。」

とても素敵な笑顔の店員の指示にしたがって、野郎(やろう)どもは一段一段を重い足取りで上った。『いざ尋常(じんじょう)に、勝負!』僕は心のなかで意気込んだ。

 ところが、階段を登り終えた僕のその意気込みは空振りに終わった。そこには僕ら以外誰もいなかったのである。これでは挑戦にならないではないか、そう思いかけたところで僕がへぎそばを注文したことを思い出した。内向型人間にとっては、坊主頭の身長160センチがおしゃれなカフェでへぎそばを啜るのもかなりのチャレンジなのだと。僕は再び兜(かぶと)の緒を締(し)めた。

 途中、年配と中年の女性の2人組と外国人女性2人組が入店してきたが、案外苦痛ではなかった。人間に備わっている3種のストレス反応のうちの「チャレンジ反応」が僕を助けてくれていたのだろう。

 

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ストレスに対する人の反応は本人の考え方に大きく左右される。『これは挑戦だ。』などとストレスに対して何らかの意義を見いだせれば、程なくしてチャレンジ反応が起動しDHEAなどのホルモンのおかげで、身体は最高のパフォーマンスを発揮しやすい状態になり、その後の身体への負担も残らず様々な点でむしろプラスに働く

 

 目前に大きな窓が広がる席についた我々は、その向こう側に見える電子掲示板が妙に気になった。どうやらそのお店は蜂蜜(はちみつ)入りのハニーレモネードなるものをサブスクリプションとして販売しているようなのだ。店の前では1人の若い女性が呼び込みをしていて、通りかかる人に手当り次第声をかけている。

 「あの人、絶対に美人なんだよなあ。」

 しばらくその光景を眺めていた友人が声をもらした。向かいの店とはいえこちらは2階にいるわけだから、サンバイザーをかぶった女性の顔までは見えないのだ。

「おいおい、あれはハニートラップだよ。気をつけたまえ。」

友人は僕の注意喚起(かんき)に頷(うなず)きこそしたものの、相変わらず目は彼女に釘付けだった。そして更にこう言う。

 「帰りにさ、あの人の顔見てから帰ろうぜ。」

「甘い誘惑(ゆうわく)で店内に促(うなが)された後、別室に連れて行かれごつい男どもに購入するまで監禁(かんきん)されるのがおちだぞ。」

「そのときはお前がたのむ。」

「はい?」

「俺は知らん顔で帰るから。」

「勘弁(かんべん)してくれ。」

互いの冗談に笑い合い、それが落ち着いた頃に彼に質問を投げかけてみた。

「いやぁしかし、美人は好きか?」

「当たり前だ。」

「うむうむ。」

 美人を見るとなぜ男の脳みそがぐつぐつと興奮(こうふん)しだすのかは定かではないが、進化論の観点から見ればいくつか候補(こうほ)は弾き出せるのではないかと僕は推測する。美人は、自身の生存または種の繁栄(はんえい)にとってなんらかのメリットを、男の生存本能に予感させるのだろう。

 おしゃれなカフェの疎外感(そがいかん)に包まれながらも、眼下に見える美人に我々の報酬系(ほうしゅうけい)は刺激され、脳内ではドーパミンが忙しく動き回っていた。しかしドーパミンは幸福を追い求めさせる物質であって幸福そのものは与えてくれない。野郎2人は虚(むな)しくも、カップの底で籠城(ろうじょう)する数粒のタピオカと格闘することしかできないのだった。

 

 そして、またの再会を約束し熱い「じゃあ。」を交わした後の帰り道で、煙草の害にも勝ると言われる孤独を癒やしてくれたその友人に向けて、暗くなり始めた空に感謝の念を僕は投げたのであった。

 

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 今回は楽しげなお話でしたが、もちろん僕の1週間は苦しいこともありました。そのようなことも今後は組み込めるように努力していきます。

 

 

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  1. 散歩(https://pixabay.com/images/id-839789/
  2. 玄米とそば(https://pixabay.com/images/id-316532/https://pixabay.com/images/id-801660/を加工)
  3. ジャンプ(https://pixabay.com/images/id-1822503/
  4. 友(https://pixabay.com/images/id-1807524/