謝罪(汗)!月曜【長編小説】と水曜【おかしな小説】をお休みさせてください。・゚・(ノД`)・゚・。

f:id:nenta-moyori:20200928102855p:plain

 このブログ「最寄の本棚」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。そして合わせて、「申し訳ない。」とも言わせてください。今週も記事の投稿を2回程お休みさせていただいきたいのです。具体的には以下の2つです。

  1. 9/28(月)つまり今日の【長編小説「井の中の蛙達」12話】
  2. 9/30(水)の【おかしな小説「夢から覚めた孤独、月を見る」の続き】

 以前からだらしのなかった本ブログは、相変わらず「みたらし団子」のように、たらしにたらしている次第であります。つきましては「もう、たらすものがないよ。」というほどに、たれてしまっているのが現状でありまして、まさに「覆水盆ふくすいぼんにに返らず」、読者の方からすれば「もう何がなんだかわからねえよ。」という有様かもしれないことを、僕はさっしています。

 しかし、ここだけはお伝えしたいのですが、みたらし団子にはそれらをつなぎとめるための芯および核となる「くし」があります。どれだけ周りのタレや団子がめちゃくちゃな状態になろうとも、木で出来た串だけは頑として存在し続けるのです。

 つまるところ、その「串」とはこのブログの最重要価値観「皆に居場所が有るように」なのです。

 しかし、所詮しょせん木製。金属ほど強くはありません。木は逆境に見舞われたときでも、しなることでむしろそれを力に変えられるというメリットもありますが、その向かい風が強すぎればバキッと折れてしまいますし、火を点けられれば簡単に燃えてしまいます。なにが言いたいのかといいますと、1人では無理だということです。「ブログ」という概念には必ず「書く側」と「読む側」の双方的な関わりがあるわけで、そもそも根本的に孤独ではなし得ないことなのです。

 「三本の矢の教え」よろしく、一本のみたらし団子の串では簡単に折れてしまいますが、それが3本あれば話しは違ってきますし、もっと数が多くなれば尚更なおさらです。

f:id:nenta-moyori:20200928105043p:plain

 僕という串はこれからも自分の価値観を大切にしながらも、異なる価値観を持っている人達とも団結して、「生きる」という名の「逆境」に立ち向かっていきます。そして、この「最寄の本棚」はその道を進むために必要な車輪の一つです。

 また、誰かにとって身近な、まさしく「最寄の本棚」になることができれば幸いです。

 今後も読者にメリットのある記事を目指して努力して参りますので、これからもよろしくお願いします。m(_ _)m

画像出典

※番号は上からの枚数順↓

※リンクの前の単語は、どの画像かをわかりやすくするため

  1. 「ごめんなさ...」(https://pixabay.com/images/id-2150164/を加工)
  2. 「うん。さすがに...」(https://pixabay.com/images/id-462557/を加工)

9/26無料で短い【1週間小説~人生を良くするエビデンスを小説に】週.4

f:id:nenta-moyori:20200926101057p:plain

目次
今回の主な知識

筆者の1週間を小説化「【お試しYouTube Premium】【amazarashi増殖】【NORAINU KAITOの人生初の路上弾き語り】【立ち机拡大】【人の写真を狂ったように貼りまくる】」【毎週土曜日17時投稿】

※物語にするにあたって少々の誇張はありますが、事実の道筋から道草程度に収まるように努めています。

※画像はイメージです

YouTube Premium」と自然音

 YouTubeユーチューブ Premiumプライム。加入している方も多いことだろうが、僕はと言えばつい数日前から1ヶ月間の無料体験期間に突入している。

f:id:nenta-moyori:20200926105523p:plain

 「はて?なんのことやら。」と今まさに思った人には端的に説明するが、「YouTube」という無料動画配信サイトがあり、「YouTube Premium」とは課金することによってワンランク上のサービスを受けることができるものだ。

 鈴木ゆう氏の「最高の体調 ACTIVE HEALTH」を読んでから僕は、

作業中や雑務中に自然音をよく聞く。

 長い人類史の中で多くの時間を自然と共に過ごしてきた人間の身体は、自然の中でこそ最高のパフォーマンスを発揮しやすいように適応してきたそうだ。

 しかし、近代の先進国の暮らしぶりはそれとは程遠く、コンクリートだらけの世界で人工的な景色や音にどっぷりとかっている。とはいえ工夫次第ではそこから抜け出す手はいくつもある。その1つとして僕はほとんどの時間、イヤホンを耳に突っ込むことにしたのだ。そこからは自然の音が優雅ゆうがに流れ、そして外界の騒音は緩和される。まさに一石二鳥なのだ。

f:id:nenta-moyori:20200926110048p:plain

 はじめは自然音が再生される前や途中に広告が割り込んで来るのもそこまで気にはならなかったが、余計なことが頭の中から除外され目の前の作業に没頭しているときには流石に不満を感じた。そして、再生中ずっと画面を点けておかねばならないことや他のアプリを起動できないことにもやがて「どうにかならないものか?」と思い始めた。自分という人間の貪欲どんよくさを改めて実感した。

 以上が僕が今週「YouTube Premium」の無料体験を開始した諸々もろもろの理由なわけだが、話しはここで終わらない。月額1,180円の知られざるメリットを発見したからだ。

YouTube Premium」と「amazarashi」の増殖

※クリックすると音が出ます

 「amazarashiあまざらし」をご存知だろうか?「雨曝し」が由来のこの音楽バンドは、テレビなどの公のメディアへの露出は少ないにも関わらず独特の世界観で多くのファンを魅了し続けている。僕もそのファンの1人だ。

 今まで僕は、1曲を除いては「amazarashi」の曲はYouTube上にアップロードされたミュージックビデオでしか鑑賞したことがなかったのだが、おどろくことに無料体験を開始した途端とたんに曲の数が増えたではないか。もっと様々な「amazarashi」を聴きたいのだが金銭的理由でCDを買うわけにもいかない。そんな人間にはこんなにありがたいことはなかった。

 ところで、ここまで「YouTube Premium」と何度口ずさんだことだろう。数えてみよう。ああ、タイトルを除いては「YouTube Premium」と書いたのは3回か。いや、「YouTube Premium」と記載したのは今ので4回目か。おっと、「YouTube Premium」は5体目か。しまった、「Y・・・

 一回、止まろうか。

 危うく底なし沼にはまるところだった。自己観察メタ認知に救われた。ありがたい。

※解説

【自己観察】文字通り自分を観察すること。セルフモニタリング。

メタ認知

メタ認知はヒトの脳に生まれつき備わった能力で、「思考について考える」という一段上の認知機能のことです。

 誰でもふと「いま自分は晩御飯のことを考えていたな・・・・・・」などと思った経験があるでしょうが、これなどはメタ認知が起動した典型的な例。

(鈴木祐「最高の体調 ACTIVE HEALTH」より引用)

  ちなみに、僕が「amazarashi」で今のところ最も好んでいる曲は「僕が死のうと思ったのは」だ。タイトルから好き嫌いが分かれるだろうが、興味のある人には是非の一聴をおすすめしたい。 

※クリックすると音が出ます

 「NORAINU KAITO」記念すべき人生初の路上弾き語りライブ

 

 先週にも書いた「amazarashiあまざらし」のコピーで活動しているNORAINUのらいぬ KAITOかいと氏は、東京のぼう公園で3回に渡る弾き語りライブを成功させた後、沖縄に帰ろうと空港を目指したのはいいものの、あろうことか乗り遅れてしまった。ゆえにもうしばらく都会の喧騒けんそうに包まれた生活を送ることを強いられたわけだが、彼は見事にその中にこそチャンスを見出した。そう、新宿駅前での人生初の路上ライブに思い立ったのだ。

※クリックすると音が出ます
 
 
 
この投稿をInstagramで見る

NORAINU KAITO(@ka.ito393)がシェアした投稿 -

 「19:50」辺りからは、僕が好いている「僕が死のうと思ったのは」も歌っている。彼の歌唱は実に素晴らしいものであり、それは警察官に対する対応にも当てはまる。「はて?なんのことやら。」と思われた方は上の動画の「35:30」からその後を見ていただくと事の次第がわかるだろう。

 それにしても、彼の怒号には胸を打たれた。今現在はコピーだが、個人的にはオリジナルも楽しみにしたい。

今週の試行錯誤2選

 誰もが各々の日々の中で様々な改善を繰り返して生きている。僕もその例外ではなく、そんな個人的な模索を以下に記す。

f:id:nenta-moyori:20200926112518p:plain

スタンディングデスク拡大戦略

 勉強やデスク仕事といえば座っている姿を想像される人が多いかもしれないが、僕はといえば大抵たいていは立ったまま作業をこなしている。

f:id:nenta-moyori:20200926113356p:plain

これは、いわゆる「DaiGo弟子(※メンタリストDaiGo氏の動画から学ぶ人々の俗称ぞくしょう)」にはありふれた話だ。つまるところ、座っていると血流が悪くなって疲れやすかったり後々のちのち病気になるリスクも上がるので、健康的にも集中力を高めるためにも立ってやりましょうということだ。

 「若きウェルテルの悩み」で有名なドイツの小説化・ゲーテ執筆しっぴつは立ち机で行っていたという。

作品を書くときには、ゲーテは「立ち机」を使っていました。

 (中略)口述筆記をするときでも、椅子にすわるのは秘書の方で、ゲーテは立ったままでした。

絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決 (草思社文庫)より引用)

 ちなみにゲーテと言えば、「ウェルテル効果」でも有名である。

※解説【ウェルテル効果】自殺が報道されると、自殺者が急増する現象。「若きウェルテルの悩み」の主人公・ウェルテルが最終的に自殺することに何かしらの影響を受けて、現実世界でも自殺者が急増したことが由来。

 今まで、僕のスタンディングデスクは1m程の高さの本棚だった。ようは本棚の上で文字を書いたり絵を描いたりキーボードを叩いたりしていたわけだが、「さすがにせますぎやしないかい?」と脳の中の誰かがしきりに言うので僕は打開策を見出す決意をした。 

 良い案が浮かんだのはかなり前のことであったが、それを実行に移したのは今週の日曜日(※日曜日が週の始めだと考えて)だった。その案とは、自室にいつ捨てようかと放置されていた大きな長机で床からニョキニョキと生え上る2本の本棚の間に橋をかけるというものだ。

 たして、それは成功した。今僕は広々とした机で白く輝く画面とにらめっこしている。

 机が広いと作業効率も上がるから、今後のこのブログ「最寄の本棚」の成長も少しは加速したのではないかと微笑ほほえんではいるが、相変わらずおぼつかない点ばかりで、点、点、点点、点点点で真っ黒になってしまう程であるが、裏を返せばやりたいことが沢山あるということだ。

まるで音楽室!狂ったように写真を貼りまくる

 学校教育は全国民に義務ぎむ付けられた1つの通過点であるが、義務とは名ばかりで楽しい思い出も山程あるはずで、しかしやはり辛く苦しい思い出ばかりが後味の悪さを残す場合もあるだろう。

 そんな学校の音楽室をあなたはどんなふうに記憶しているだろう?壁にベートーヴェンやらモーツァルトやらの肖像画はなかっただろうか?

f:id:nenta-moyori:20200926114039p:plain

そしてそれをいささか恐怖の形相ぎょうそうにらみつけていた幼いあなたもいたのではないだろうか?

 僕の部屋はそこまで不気味なものではないものの、同じようにして人の写真がいくつもセロハンテープで丁寧ていねいに貼り付けられている。そんな風にした理由はいくつかあるがその中でも顕著けんちょなのが以下の2つだ。

  • モチベーションを保つため
  • 他者の大切さをいつなんどきも忘れないため

 そこには友人や知人、はたまた著書「マインドセット:「やればできる!」の研究」で有名なキャロル・S・ドゥエック氏や、著書に「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代」などがあるアダム・グラント氏、そしてもちろん、「amazarashi」も優しく佇んでいる。

 現在は実験的に25枚程しか貼っていないが、今後さらに増えていくことを見込んでいる。

 他者の目があることで人の自制心じせいしんやモラルはその時だけでも向上するし、ましてやそれが大切な人やあこがれの人ならモチベーションも上がるはずだ。ならば、写真ではどうだろうか?常時見られているような状態ではどうだろうか?数多くの人ならどうだろうか?

 しばらく様子を見ていくことにする。

 これからも僕はこんなふうにして、自分の生活そして死ぬまでの道を改善して「皆に居場所が有るように(※以前から微妙びみょうに変更を加えました)」という自分にとっての最重要価値観を追求していく。

おわりに

 まだまだ書きたいことはうんとあるが、読者も筆者もあまり長くなっては困るだろうし、互いに時間も限られているのでこれくらいにしておこう。今週も苦楽をしっかりと自分の足で進んだ。

 さて、あなたの今週はどうだっただろうか?(・∀・)

f:id:nenta-moyori:20200926115334p:plain

 

完 m(_ _)m (^O^)/ ありがとうございました~(*´ω`*)♪ また来週~(^_^)/~♫

画像出典

※番号は上からの枚数順↓

※リンクの前の単語は、どの画像かをわかりやすくするため

  1. トップ画像、紅葉(https://pixabay.com/images/id-5385956/Canvaで加工)

  2. 「一ヶ月立ったら引き落とし...」(https://pixabay.com/images/id-2587124/を加工)

  3. 「自然...良き...(*´∀`)」(https://pixabay.com/images/id-2295431/Canvaで加工)

  4. 「どうする?...」(https://pixabay.com/images/id-1276384/https://pixabay.com/images/id-2668617/Canvaで加工)

  5. 「立っています。」(https://pixabay.com/images/id-336376/Canvaで加工】

  6. 「別に見てないけども...」(https://pixabay.com/images/id-2653840/Canvaで加工)

  7. 「君の今週はどうだった?」(https://pixabay.com/images/id-2759978/Canvaで加工)

無料で短い【おかしな小説~人生を良くするエビデンスを小説に】ep.3

f:id:nenta-moyori:20200917145713p:plain

※↑上の画像ですが、黄色い文字のタイトルにミスがあります(汗)。正しくは下のタイトルにある通り「夢から覚めた孤独、月を見る(前編)」です。「夢から醒めた夢」という舞台が印象に残っていて、それに引っ張られてしまいました(笑)。・゚・(ノ∀`)・゚・。(2020.9.24追記)

※読み終わるまでの目安分数:12分

 不気味な不思議で畏怖な世界観「夢から覚めた孤独、月を見る(前編)」毎週水曜17時投稿

※画像はイメージです

 仕事の大詰めで疲弊(ひへい)した心身を俺は時として長い昼寝で癒やすことにしている。ちょうど今日がその日だった。カーテンの隙間からぼんやりと差し込む赤色の光に照らされた天井を見上げて、俺は今のおおよその時間を把握した。

「ぅあ゛ーよく寝た。」

 重い布団を押しのけて、のっしりと状態を起こす。一応の暖房は稼働させているものの、部屋の温度はまさに冬に相応(ふさわ)しい。とはいえ、今まで羽毛に埋まっていた身体はほんのりと火照っている。

 体温を逃すまいとして手近なジャンパーを羽織りながら立ち上がり、身体を精一杯に伸ばす。

 ぼんやりと紅色に染まったカーテンを見て「遮光に買い換えようかな。」なんてぼんやりと思いながら、それを束ねる。眩い光に照らされて俺は思わず顔を背けた。

f:id:nenta-moyori:20200905164330j:plain

ようやく目が慣れてきたところでゆっくりと目を開き夕焼けの景色を拝む。

 その瞬間、俺はもしやまだ夢から覚めていないのではないかという強い不安感に襲われた。「ねえねえ。夢の中で寝ているってことは、死んでいるってことなんだよ。」と昔まだ自分よりも大きなランドセルを背負っていた頃に、やんちゃな同級生に言われたのを、なぜか今になってふと思い出したが、そんな迷信は今はどうでもいい。とっさに頬(ほほ)を指でつねってみると痛みは確かに感じられる。が、そもそも夢の中では痛みを感じないとはよく言われることだが、果たしてそれが根拠に基づいた事実なのかは定かではない。実際、過去には痛みを感じた夢を経験したような気もする。いや、夢なら夢でよい。明晰夢(めいせきむ)などそうそうに経験できることではないから俺は少なからずの興奮を抱いた。

 その場に居ても立っても居られずに、羽織ったばかりのジャンパーのチャックを音を立てて閉めながら玄関に走り出す。愛用のスニーカーをつっかけてドアを開けると、アパートの廊下からは途端(とたん)に冷たく清らかな冬の風が流れ込み、逆に室内の淀(よど)んだ空気は嬉々として飛び出していった。俺はストレスに対する人間の反応の1つであるチャレンジ反応を起こすべく、一度深呼吸してから「俺は今、わくわくしている。」と自分に言い聞かせて側の下に向かう階段に飛びついた。

f:id:nenta-moyori:20200916141845j:plain

 

 夢であってほしい。でも、現実だとしたら...それはそれで面白いかもしれない。どっちつかずの矛盾した感情を胸に抱えながらも、俺はアパートの日陰で風に吹かれながら、眼下に広がる真っ赤に染められた街を唖然として眺めていた。

f:id:nenta-moyori:20200916142622j:plain

それは至っていつもの風景だが、不自然極まりないものが1つだけある。

 手前の道路を会社帰りのサラリーマンや学生、そして野菜の入ったビニール袋が籠(かご)に詰め込まれた自転車にまたがる主婦が、右から左へ左から右へと流れていく。その奥を見れば所々に高く突き出るビルやアパート、そして家々が立ち並びその間を縫(ぬ)うようにして車や人々が蠢(うごめ)いているのが見える。それは極めて普通な景色だ。だが、問題はそのさらに向こう側にある。我々の文明が気づいた『街』、その地平線の先には大きすぎる月が地面に埋まるようにして佇(たたず)んでいた。大きすぎるとは決して比喩(ひゆ)などではなく、文字通りの意味である。街を見下ろすようにして地平線を堺に広がる膨大な空、その面積の8割を今日はそれが覆っているのだ。

f:id:nenta-moyori:20200917132302j:plain

 夕焼けの世界に出現したその月は、まだ黄色い光を空に投げるわけでもなく、反対の空で山に隠れもうじき息絶えるであろう太陽の日差しに照らし出されていた。クレーターは遠目に見てもありありと確認することができ、凸凹(でこぼこ)と不気味なそれは全体的にピンク色に染まっているが、まばらに赤やオレンジそして黒が散らばっているのが不気味さを一層強くしていた。

 俺は急に不安になって、誰でもいいから共感する相手が欲しくなり、坂を下って道の手前までやってきた。ところが、道行く彼ら彼女たちは何食わぬ顔で各々の日常を歩んでいるのだ。これはおかしい。

 「あの、突然失礼します。1つお尋ねしたいことが。」

正真正銘の内向型人間である俺ですら、この状況では見知らぬ人に声を掛けることも容易(たやす)くなることに少しばかり驚きを覚えた。それを横耳に聞いた芸術家風の長髪の男がこちらを見る。

「おや、なんでしょう?」

「単刀直入に申し上げます。あの月、大き過ぎやしませんか?」

「はて?と、いいますと?」

「いえね、いつもの月と比べて明らかに大きさが尋常ではないでしょう?」

「私にはいつもと何ら変わりのない、ただの白く薄っすらとしたまだ弱々しい月にしか見えませんがね。」

「それは...本当ですか?」

 男は苦笑して答えた。

「嘘をつく意味がありませんな。」そう言い終わったところで、少し心配そうな顔で俺の目を覗き込む。「ところで、あなたの目にはどう映っておられるのでしょうか?」

「いえ、大したことではないのです。ありがとうございました。失礼します。」

 足早にその場から退散したあとも、俺はしばらく街の中を彷徨(さまよ)い人々の顔色を伺(うかが)った。ところが誰一人として、この異常事態に驚愕(きょうがく)している人間はいなかったのである。そもそも、あの長髪の男は「いつもと何ら変わりのない」と言っていた。つまり、月があんなに恐ろしい形相に見えているのは、俺だけなのだろうか。俺はいつからおかしくなってしまったのか。いや、引き下がるにはまだ早い。この街の人間は皆そろって集団浅慮(しゅうだんせんりょ)に陥(おちい)っている可能性もあるわけだ。

f:id:nenta-moyori:20200916165811j:plain

集団であるがために誤った選択をなんの疑いもなく決断してしまったり、知らず識らずのうちに傍から見れば明らかにおかしい規範が当たり前になってしまうという心理現象だ。世界中を探せば俺と同じ感情を今まさに抱いている人間がどこかにはいるだろうという淡い期待が湧いた。

 現在は便利な時代になった。電車に揺られなくとも、船酔いに目眩(めまい)を引き起こされなくとも、遥か上空で耳を痛くされなくとも、世界と繋がることができるのだから。アパートの自室に戻った俺はすぐさまスマホを操ってインターネットに接続した。しかし、目当ての記事や投稿がどこにも見つからない。まさか、俺以外の全人類が集団浅慮に支配されてしまったというのか。不安でたまらず何度もページを更新してみたが、目に入る情報は今となってはどうでもよいものばかりだ。そして不安はさらなる不安を呼ぶ。全世界に集団浅慮が蔓延(まんえん)したのなら、果たしてそれは集団浅慮と呼べるのだろうか?俺が見ている世界が仮に真実だとしてもそれを証明することが出来なければ、相対的にそれは間違いとならざるを得ない。人員の大多数が賛成すれば、それこそが正義となる。それとも、さっさと眼科または精神科に行くべきだろうか。

 不安はもはや恐怖へと変わった。今となってはこの自室だけが俺の居場所である。もうここから出たくもない。俺はジャンパーを着たまま、布団を引き剥(は)がしてできた隙間に再び身体を滑り込ませた。中にはまだほんのりと自分の温もりが残っている。どうにもできない思考をあれこれと巡らせているうちに、やがて意識は遠のき...

 

 嫌な予感がして目を開けた。

f:id:nenta-moyori:20200917094332j:plain

先程とは色こそ違うものの、天井は明るく照らされている。身を起こすとシャカシャカと音がして自分がジャンパーを着ていることに気がついた。嫌な予感はますます信憑性(しんぴょうせい)を帯び始めた。

 恐怖は人に行動を駆り立てる。音を鳴らして布団から這(は)い出て、急いで立ち上がる。顔面に強い光が当たりまたもや顔を背ける。そしてゆっくりと視野を広げて眺める街の先には、大き過ぎる月が世界を真っ黄色に染め上げていた。そのあまりの明るさに、暗いはずの空までもが淡い黄色に染め上げられ、やや小汚く見える。

f:id:nenta-moyori:20200917140245j:plain

 

 恐怖は人に行動を駆り立てる。自室に籠城(ろうじょう)してはいられない。俺には生活がある。仕事がある。今は休暇中とは言え、あと3日もすれば強制的に活動を開始しなければならない。そしてそれ以前に、このまま人生を放り出すわけにはいかないのだ。俺には追求すべき価値観がある。

  早急に、病院に駆け込もうか否かに全意思力を向けたが、ある突飛な提案が脳裏を掠(かす)めた。

『あの月に行こう。』

我ながら馬鹿げた考えではあるが、あながち蔑(ないがし)ろにするわけにもいかない微妙な問題だ。確かに外を見ればビルや家々の向こう側で、月は手に取れそうな程にありありと存在している。もっと近くまで赴(おもむ)けば何かがわかるかもしれない。それにしてもあの月、実にふてぶてしい。もう少し宙に浮かんでいてくれてもよいものだが、奴は、少なくともここから見ればどっかりと地面にあぐらをかいているように見える。あたかも「陸を伝ってくれば僕に辿り着けるよ。」とでも誘っているようだ。

 それに従(したが)ってもよいのだが、『君子危うきに近寄らず』という言葉もあるように自ら危険に身を晒(さら)すことはない。これは映画、特にホラー映画の話しだが、興味本位で近寄った登場人物が序盤に天に召されるというのはもはやお約束だ。しかし、今回で言うなら登場人物は俺一人しかいないわけで、その唯一が他界するようなことがあればそれは物語として成り立っているとは言えない、そう思ったが、主人公が最後にこの世を去るというのはそれはそれでたまに見かける展開である、とも思ったわけだが、なにを隠そうこれは現実であるわけで現実は不可解なことばかりである。つまり何が言いたいのかと問われれば、俺は少なからず怖いのだ。

 とはいえ、恐れに人生の可能性を奪われるわけにもいかない。自分の道は己で切り開きたいものだ。それに以前に読んだキャロライン・アダムス・ミラー氏の「実践版GRIT やり抜く力を手に入れる」(すばる舎では

研究によれば、人が自分にとって最も価値ある目標を持つことができない主な要因は、「恐れ」だという。

(同書より引用)

と書かれていた。そしてブロニー・ウェア氏の「死ぬ瞬間の5つの後悔」の興味深い内容が同書内で抜粋されていた。

実は、『死ぬ瞬間の5つの後悔』という本に出てくる、ホスピスにいる人達の後悔のナンバーワンとは、「自分に正直な人生を生きればよかった」なのだ。 

(同書より引用)

 つまり、俺はこの教訓を活かしたいのだ。様々なことを吟味(ぎんみ)した結果、やはりあの未知の物体にできるものなら辿り着く、少なくとも近づくことにした。

 そうと決まれば行動は早い方がいい。部屋中から使えそうなものをかき集めて大きなリュクサックに詰め込む。しかし、こんなに大それた真似をしたのは一体どういった自然現象なのだろう。それとも異星人かかぐや姫の類だろうか。と、やや無意味な思考を巡らせていると、あぐらをかいた膝(ひざ)に何やら重みを感じた。目を向けると、そこにはどこから入って来たのか、小さな鼠(ねずみ)が悠々と座っていた。

f:id:nenta-moyori:20200917142157j:plain

 「俺は危ない人間かもしれないんだぞ?逃げないのかい?」

俺は思わず物言わぬ小動物に話しかけた。

「それはこっちの台詞だね。おい人間、逃げたまえよ。」

「共存の道はないかい?」

「それはお前次第だね。」

「ありがとう。」

今、不思議なことが起こったような気がする。しかし、どこを驚いてよいのか俺にはわからなかった。

 「お前、俺も連れて行け。きっと役に立つ。」

鼠が言った。

「えっと...いいけど。」

「ああ。それがいい。これはお前のためだ。」

「はぁ...」

 

 夜風に身を晒すと、案外凍える程ではなかった。街にはちらほらと雪が降り始め、空は黄ばんだ厚い雲に覆われている。これからどうなるかはわからない。一度深呼吸をして一番大切な価値観を思い出し、次にセルフモニタリングを試みる。俺は少年の頃に見た夢か現実かの区別が曖昧な、幻想的でけれども恐ろしい記憶を思い出した。あのときの興奮が全身の隅々まで行き渡っている。

 カサカサと音がする方に目を向けると、鼠(ねずみ)が地面から飛び出た雑草を貪(むさぼ)り食べていた。

「美味いの?」

「ああ。お前にはわからんだろうがね。」

「それはそうだね。ところで、寒くないのかい?」

「それは...そうだな。」

「ここに入(はい)れる?」ジャンパーのポケットのボタンを外すと、そこにはその鼠が入ってもまだ余裕があるくらいの空間があった。

「気が利くな。」

俺の足をするすると伝ってそこにぴょこっ入った鼠は一瞬気持ち良さそうに目を細めたが、すぐに勇ましく前方を見つめた。

 リュックサックを背負い直して坂を下る。雪がつもり始めた街は、月が放つ黄金の光を至るところに跳ね返している。

 

 「レンタカー」という響きには以前から興味を惹かれていた。大学在籍中に免許は取っていたものの、自家用車を所有する必要もないのでその用途は極めて少なかった。 

 

続く...

 

画像の提供元

※番号は上からの枚数順↓

※リンクの前の単語は、どの画像かをわかりやすくするため

  1. トップ画像、月と猫(https://pixabay.com/images/id-736877/を加工)
  2. 夕焼け、男(StockSnapによるPixabayからの画像を加工)
  3. 階段(https://pixabay.com/images/id-1081904/
  4. 街(https://pixabay.com/images/id-1868667/を加工)
  5. 巨大な月(https://pixabay.com/images/id-322222/https://pixabay.com/images/id-2246731/https://pixabay.com/images/id-1868667/を加工)

  6. 交差点、集団(https://pixabay.com/images/id-400811/を加工) 

  7. 目(https://pixabay.com/images/id-1132531/を加工)

  8. 黄色い光、男(StockSnapによるPixabayからの画像を加工)
  9. 鼠(https://pixabay.com/images/id-4051005/と筆者所有写真を加工)